ぱりぱり

人間蒸発のぱりぱりのネタバレレビュー・内容・結末

人間蒸発(1967年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

斬新でかっこいい
やっぱり今村昌平好きです!!


本当はもっと早い段階で「セット外せ」と監督が言うはずだったけれど、言うのを忘れていたらしい笑
ということは以下は独演になるわけだけど、即興でこれはすごい...

-------------
「あなた方が言っていることは真実には実感が伴うということだと思います。僕にはなにが真実かは分からないけれども、これも真実とは思っている。例えば、ここにセットがある。…なんとなくちゃんとした部屋のような気持ちで話をしていましたよね。あなた方にも部屋としての実感があったでしょう。ところが、これは撮影所のなかのセットでしかない。実感なんてものはあまり信用できないですよね。これはフィクションなんです。大島くんの蒸発という事実から、このような追及のドラマが展開されてきたわけだけれども。これも自然に展開してきたわけじゃない。展開しようとして展開してきたわけなんだから。…キャメラはあなた方を写そうとしているし、あなた方は写されようとしている。」
----------

監督が言うように、ネズミはどんどん女優がかってくる。後半で、猫を殺した夢を語りシーンなどは、ネズミ自ら監督にカメラで撮ってほしい、と言ったそう
監督が言いたかったのはこのことで、つまり、カメラありきの展開になってしまったということであり、カメラがなかったらこのような展開にならなかったということ
露さんははじめ俳優として動いていたわけだけど、ネズミに好意を抱かれるようになり、さらに監督にはそのままGOするように言われ、ただ困惑しきっている裸の人間の姿になっていく
そういう意味でカメラの力、虚構性を見せてくれる。それと、真実なんてあるのかていう疑念。誰かのとっての事実はあっても真実なんてないのかもしれない


この映画について本でいろいろ読んだけれど、この話には本当は続きの展開があったけれど、監督が蛇足だと思って切ったらしい
後日、大島だと名乗る男性が現れネズミとウサギを連れて撮影陣が会いに行くと、全く違う人でだった。すると、ネズミとウサギがすごい勢いでその男性を罵り出して、2人で「バカ野郎」とその男性に叫んだそう

でも、原一男とかが言うようにあった方が面白かったと思うな〜それこそドキュメンタリーだ...!ていう展開なのに。