天豆てんまめ

人間蒸発の天豆てんまめのレビュー・感想・評価

人間蒸発(1967年製作の映画)
2.8
今は亡き今村昌平監督。
彼はテレビや劇場映画でドキュメンタリーも撮っていた。
この作品は、突然消えてしまった婚約者の行方を追う女性を主人公に据え、
今村監督の代弁者的な立ち位置で俳優の露口茂(「太陽にほえろ」が有名)を伴って、関係者を尋ねさせる。女性にも内緒にした隠し撮りと録音で、果たして、婚約者は見つかるのか、とスタートするのだが、前半のクライマックスは実は婚約者は別に女性がいて(二股しつつ振られて、彼女と婚約した)その女性を直撃するところである。後半は一向に見つからず、途中で方向性がシフトされていく。女性自身の業にただひたすら迫っていく。幼少時からの姉との確執など。ドキュメンタリーとは中立という視点はなく、あくまで監督の視点と思惑と操作が色濃く反映するのだと思ったが、この作品はそれが過ぎる。ただ、それを今村監督も言いたかったのかもしれない。ドキュメンタリー作品としては異例の作品だと思う。

亡くなられて、当時、縁が深い知人と共に今村昌平監督のお別れの会に伺ったことがあるが、そこで驚いたことがある。献花台をはさんで左に「楢山節考」、右に「うなぎ」で受賞したパルムドールのトロフィーが飾られていたのだが、一方、入口近くにでかでかと直筆文字で印刷された巨大ボードが飾ってあり、こう書いてあった。「すべて◎◎◎がかたいうちだぞ 今村昌平」※公共SNS上、直接表現は控えさせて頂きます、、

さすがに人間の性(さが)をとことん追求した監督だ。
座右の銘として言うことが違うと、妙に納得してしまったのだった笑