うにたべたい

DAICON FILM版 帰ってきたウルトラマンのうにたべたいのレビュー・感想・評価

3.2
無名時代の庵野秀明、岡田斗司夫、赤井孝美、山賀博之らが制作した、ウルトラマンをオマージュした自主制作作品。
タイトルは『帰ってきたウルトラマン』ですが、『帰ってきたウルトラマン』とは基本的に関連はなく、キャストや設定等オリジナルです。
ウルトラマンファンの庵野秀明は、本作以前にも自主制作のウルトラマンを作成していて、"帰ってきた"のタイトルは以前作成したウルトラマンにかかっているそうです。

DAICON FILMは、大阪で開催された日本SF大会で集まった大阪の大学生たちが結成したグループです。
本作も、元は大阪で開催された4回めの日本SF大会(DAICON4)のプロモーションとして作られた同人作品で、早い話がガチ勢のオタクが集まって作ったすごい作品が本作ということになります。
なお、参加主体のメンバーは現在もアニメ・ゲーム業界の最先端で稼働する人々で、DAICON FILMも後のガイナックスの母体となります。
DAICON FILMはオタク系の歴史を感じる上で外せないグループですね。

平和で穏やかな朝を迎えたとある街・ヒラツネ市に巨大隕石が落下し、中心部は壊滅状態となります。
被害の報告を受けたMATは、その調査にあたるのですが、隕石の大きさに対して質量が軽すぎることから、内部に空洞があり、そこに微弱な生命反応も見られたことを確認する。
MATの隊長イブキは、その隕石は宇宙生命を送り込むためのカプセルであると断定し、MAT隊員を現場に急行させます。
主人公は21歳のMAT隊員・ハヤカワ・ケン。
彼は宇宙人であり、ウルトラマンへの変身能力を有しています。
現場に到着したハヤカワたちは、そこで巨大怪獣・バグジュエルの強襲を受けるという展開です。

MAT隊長が人命を優先せずに、生き残った人がいる可能性がある土地に躊躇なくナパーム弾の投下を指示したり、隊員同士のいがみ合いがなく軽口を叩くシーンがないなど、原作とは全く異なった作品になってます。
柔道一直線のような主人公の成長が描かれていた新マンの面影はなく、人間ドラマよりも"組織"や"兵器"が中心に置かれているように感じました。
おどけるようなシーンのない終始シリアス展開で、庵野秀明節の効いた特撮ドラマになっています。

また、タイトルはウルトラマンですが、ウルトラマンは登場せず、ウルトラマンの模様が描かれた作業服を来た巨大な若い庵野秀明が戦います。
変身アイテムは普通の黒縁メガネ、ウルトラブレスレットも加工されてない腕時計を投げつけるだけなので、ウルトラセブンや新マンを知らなければ、なぜメガネを掛けるのか、時計を投げつけるのかわからない気がします。
8ミリで撮影された自主制作映画なので画質も荒く、怪獣退治の先陣を切らない隊長は演技がDAICONなので、同人作品であることを心得て視聴する必要があります。
ただ、自主制作で作られた特撮としてはかなりできがいいです。
ミニチュアの街や街路樹の造形もしっかりしているし、マットアローなどもほとんど紙でできていると聞きます。
爆破シーンも多く、素人の撮影であれだけちょこちょこ爆破を入れるのは大変だったろうなと思いました。
怪獣は、ウルトラ怪獣感はあまりないですが、素人が手作業で作ったとは思えない美術です。
全体的にウルトラマンっぽさはあまりなく、どちらかといえばエヴァなのですが、素人学生と思えないレベルの高さや才能が感じられました。