映画おじいさん

嫁ぐ今宵にの映画おじいさんのレビュー・感想・評価

嫁ぐ今宵に(1953年製作の映画)
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大好きなおとぼけモダンおじさん、斎藤達雄の初監督・脚本・主演作ということで期待し過ぎてしまった。面白いんだけど、ありきたりですぐに忘れそうだし、物語的にもキャスト的にも他の作品とゴッチャになりそう。

島崎雪子は可愛いんだけど結婚するとかしないとかとコロコロ変わって、お前いい加減にしろ!と言いたくなるキャラ。
娘の結婚に口を出さないどころか、そのために全力を尽くす両親、特に父親のことを分かってやろうとしない(分からない?)のには本当にイライラ。湯たんぽレンタル業の何が悪い? 全部お前のためだろ。

相手の男も似たような調子だからダブルでイライラ。でも斎藤達雄が無職になったことや色街で見かけたことをもれなく悪気なくバラすところはやっぱりだし、イイ感じに間抜けでほっこり。

映像はもちろん音声も悪くて分かりにくかったけど、二人で入る入らないと揉めていたのは木製の電話ボックスで、当時は貧乏カップルがイチャつくスポットでもあったらしい。

その前に、ライスカレーが食べたいという彼の意見を押しのけ、節約のためにラーメンを食べに行く島崎雪子。ラーメンは現在では節約メシではない。ラーメンほど値段が上がった料理は他にないのでは?という、どーでもいいことを考えてしまった。

湯たんぽバイトを知ってガ〜ン!と島崎雪子がなる場面で、スポットライトが当たっているテーブルから離れ、暗い場所に移って芝居させる演出はカッコ良かった。
公園で男に婚約解消を迫られるところの暗い画も良かった。

お父さんに似てるやら小学校の担任に似てるやら、自らのパブリックイメージを知っている斎藤達雄のセルフ演出も素晴らしい。

しかしこの映画を支えているのは斎藤達雄の従兄弟役の坂本武とその妻役の沢村貞子に違いない。
「女房なんて苦労させるくらいがちょうど良い」とか歯切れが良いけど女房にコントロールされているのが伝わるお約束な演出も好き。

ただでさえお喋りな役が多い沢村貞子が本作ではさらに喋る。ホント喋り過ぎて大変そう。これは俳優監督らしい斎藤達雄のサディスティックな演出のようにも思えた。
ジョディ・フォスターが監督作『マネーモンスター』でジョージ・クルーニーにタコ踊りさせたみたいに。