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こわれゆく女のmのレビュー・感想・評価

こわれゆく女(1974年製作の映画)
3.5
『A Woman Under the Influence』なんらかの影響下にある女。原題がいいな。自分が興味深い作品だった。ジーナ・ローランズさんの自然な壊れっぷりがいい。

有名作でいつか観たいと思っていたが、これほどまでに生々しいとは思わず驚いた。なぜ、これを監督は描いたのだろうか。影響下とはなんだろうと考えると、病気のメイベル(ジーナ・ローランズさん)より空気の読めず短気なニック(ピーター・フォークさん)のことなのか、はたまた母親業なのか、夫婦生活なのか。色々な要素が描かれていて、単一ではないように思える。そこが狂気的とは言えないところだと思う。誰でもメイベルのようになってしまう要素が今作には沢山描かれていた。メイベルは確かにメンタルが弱いようだったけど、家庭や女性に求められるものは現代でも多い気がして、他人ごとではない。こう生きたい、が節目節目にこう生きねばになる様はメイベルだけじゃない。

メイベルの情緒不安定さが、凄くリアルで自分の身に起こることと似ていて、目を伏せてしまった。映画でこれだけ描けるというのは監督か監督の近しい人が精神疾患者がいるのではないかと感じる。ジーナ・ローランズさんも理解していたのでは? と思ってしまうほど。

周りの理解の無さとかもリアルで。理解の無さというか、どう接していいか分かっていない様が本当に分かる、というかあるある、というか。パーティーなんて、メイベルを思ってのしくじりで笑ってしまった。

ラストシーンが秀悦で、それでも人生は続くし、続けなくてはならない。淡々とベッドメイキングをするふたりに、幸あれと思ってしまった。

今作を普通に観れて、普通に面白かったと言える人は精神が健全なんだろうな、と羨ましくも思った作品。
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