がちゃん

こわれゆく女のがちゃんのレビュー・感想・評価

こわれゆく女(1974年製作の映画)
4.0
他から見て異常なことも当人たちにとっては普通のこと。すべてを受け入れあっているならそれでいい。

土木作業員のニックは、急な仕事が入り、その夜に予定していた妻との時間を過ごすことができなくなっていた。

妻、メイベルは子供を母に預けて、その時を楽しみにしていたが、予定が亡くなったことによって自棄になり、酒場へ出かけ男を家に連れ込む。

翌朝、ニックが多くの仕事仲間を連れて帰宅すると、メイベルは張り切って料理を振舞おうとする。

メイベルは、異常なほどはしゃぎすぎてしまう性格で、ニックの仲間にも気持ち悪がられているところがあった。

よその子供を預かった時など、突然思い付きでバレエを踊りだし、子供たち全員に仮装をさせるなど、そのもてなしはその親を困惑されるほど。

しかし、その行為を指摘されると、メイベルは逆上し、暴言を吐き暴力沙汰にもなる。

夫のニックも、時にカッとなってしまい激しい言い争う意になることも。


そして、メイベルは精神病院に入院することに。

今度はニックが過剰に父親の役割を意識するようになり・・・



冒頭から、メイベルが自分の家事仕事を、指差し確認している様子から、この女性は几帳面を通り越した異常なものを持っているとわかります。

やりすぎるメイベルには、相手に喜んでほしいという気持ちだけで悪気は一切ないのだが、よそから見ると異常に見えてしまう。

そういう風によそから異常と見られるのが嫌なニックは、これまた過剰なまでにメイベルに気を遣い、メイベルを悪く言う友人を罵倒する。

しかし、ニックも愛情の表現や他人に対するコミニケションが苦手なようで、メイベルが数か月の入院生活から戻ってくるときに、メイベルは喜ばないであろう大規模なパーティーを開こうとしたりする。

これまで、多くの映画でたくさんの夫婦の形を見てきましたが、こんなにお互いを思いあっているのに意思の疎通が下手な夫婦は見たことないです。

メイベルを演じているのが、本作の監督、ジョン・カサヴェテスの妻、ジーナ・ローランズ。神経質で些細なことにいら立ち、チックを繰り返す演技は抜群です。

夫のニックは、ピーター・フォークが演じています。
無理に温厚な態度をとり続けるも、元来は短気な性格らしく、時に激情する役を、多くのクローズアップにも応え、こちらもお見事です。

ちょっと異常な夫婦の家庭劇。
なかなか深いものがありました。
みどころたっぷり。
劇中で振舞われるスパゲティがおいしそう。

ジョン・カサヴェテス、ジーナ・ローランズ夫妻は、この6年後に、傑作アクション映画『グロリア』(1980)を撮ることになります。
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