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こわれゆく女のkitoのレビュー・感想・評価

こわれゆく女(1974年製作の映画)
4.0
長尺の145分間、終始重苦しく圧倒され続け、観終わるとついほーっとなった。

テーマは前日に観た「ロバート・アルトマンのイメージズ」と同じだけどテイストはかなり異なっていた。「イメージズ」は主人公目線で描かれており、観るものは精神崩壊の擬似体験ができる(強いられる⁈)

一方、本作はまるでドキュメンタリーを観ているようで、ジーナ・ローランズとピーター・フォーク演じる夫妻の隣人みたいな立場で観続ける気分。

3人の子供がいる主人公には最初から違和感があって、それもそのはず、既に過去に神経症を患っている設定だった。なのに、土木作業員役の夫が夜勤明けの同僚たちを無思慮に家に招いての食卓、次第にジーナの挙動がおかしくなり、それを見た同僚たちの戸惑いや、共感はしないけれど夫の苛立ちは伝わってくる。

早々に共感性羞恥に襲われまくり、コレって苦手だなあと思いながらも観るのをやめられないーー我ながらM気質なのか⁈

医師、看護師の考察を少し読むと、精神医療の歴史はそれほど長くはないのだと。「多重人格、正確には 『解離性同一性障害』が精神医学界で流行するのはアメリカでは1980年代以降なんです。日本では少し遅れて1990年代から。」(「ほぼ日刊イトイ新聞」での本作に関する精神科医&評論家 斎藤環との対談)

現在でこそ境界性パーソナリティ障害、統合失調症などなど精神医療分野も広く深く研究が進んでいるけれど、前世紀では一般には "ヒステリー" という括りで、とりわけ女性特有の症状というイメージが強かった。最近ではもう死語に近い気もする。

本作の医療関係者や周りの人々の対応は、70年代の背景を考えると、あれはあれできっちり描かれているのだろう。

ピーター・フォーク演じる夫が過去、現在どちらの基準でもそもそも元凶なのではという感も否めない。明確な説明はないけれど、マフィアのイメージがあるイタリア系っぽい絶対的な家長権で家族を支配・統率する家族形態を具現化したようなキャラで、確かにイラつく。そう思うと原題が二人の関係性に触れているのでは、と気がついた。

「グロリア」が良かったカサベテス監督、ローランズ夫妻に盟友ピーター・フォークが加わって、インディペンデントの名作が生まれたのだろう。観るのがしんどい内容なのでそうそう見直す気にはならないけれど、、、

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