砂場

ヘンリー・フールの砂場のレビュー・感想・評価

ヘンリー・フール(1997年製作の映画)
3.8
詩人がロックスターのようになるファンタジー、ハル・ハートリー逆張りから順張りへのシフトか!

ーーーあらすじーーー
ゴミ収集で働く青年、屋外カップルを覗くが見つかり追いかけられる。
セックス依存症の姉とうつの母の三人暮らし。
コンビニで再びカップルに会い絡まれるも、女の尻にゲロで撃退。
髭面の流れ者が家に住みつく、カバンにはヘンリーフールという名が。
ゴミ清掃の青年はサイモン・グリム。ヘンリーは過去悪事をしたらしく、世に疑問を呈している。
カップルの男にぶん殴られる、大怪我のサイモンはひたすら詩を書く。
ヘンリーはサイモンの母とファック、それを見る姉は喚く。
サイモンの才能をみたヘンリーは知り合いの大物編集者に君を推薦したいと申し出る。俺たちアウトサイダーだ。サイモンに君の母と寝たと報告、その後ストリップでノリノリになるヘンリー。
ヘンリーは過去に未成年淫交で逮捕歴があった。7年の刑期満了したが烙印を押され就職もなかなかできない。なかなか編集者を紹介しないヘンリー、サイモンは文芸誌に自作を送るが、「死んじまえ、詩人になろうと思うな」など厳しいコメント。自らジェームスに会いに行く。作品を読んだジェームスからも、奇を衒うだけのもの、私は過激を好むが、これは駄文だ、才能を感じるがそれだけとケチョンケチョン。
うつの母が自殺、ヘンリーは姉フェイとファック、母の葬儀。
ヘンリーはフェイにプロポーズ、指輪はゴミで拾ったものだ。フェイがサイモンの詩をネットにアップし大きな反響があった。危険視するマスコミ、教師たち、ローマ法王までがコメントを。一方でこの危うさを評価する人も。まるでロックスターのようだ。サイモンは自分が編集に交渉するからヘンリーの原稿「告白」を読ませるという。君は恩人だから。
ジェームズに見せるも、サイモンの小説は駄文の山と断られる。フェイが男の子を出産。

<以下ネタバレあり>
数年後、、、子供は5歳くらいに、ヘンリーは清掃員に。
新聞でサイモンがノーベル文学賞を取ったことを知る。ヘンリーはダメ親であり子供にバーで酒飲ませる、怒るフェイ。
近所の娘パールが義父から性的強要されていた、義父を殺してくれと頼まれるヘンリー。パールの義父は彼女の母にもDVをしていた。揉み合っているうちにヘンリーはパールの義父を殺してしまう。逮捕され放心状態のフェイ。息子は叔父であるサイモンを訪ねた。妻はジェームズの秘書だ。
サイモンとヘンリーの再会、、、この世は恐ろしい、、サイモンは自分のパスポートをヘンリーに渡し、国外逃亡をさせようとする。ヘンリーは搭乗するのか、、駆け出すヘンリー、、、THE END
ーーーーあらすじ終わりーーー

90年代は逆張りこそが本質を捉えているみたいなモードもありハルも基本逆張りの人だと思う。性も政治も暴力もちょっと出るけどイシューとしては深掘りされない。順張りでそっちに深く行くのではなく、逆張りで対象から離れてゆく。順張りの人と言うとクリント・イーストウッドかな。
ヘンリーは俺たちはアウトサイダーというが、そこも深掘りされない。いろんな出来事がある程度の距離感でさら〜と流れてゆく感じ。そこがハルハートリーの個性であると思うけど、個人的に見てていまいち乗れない点でもある。
2010年以降だと現実に起きていることが凄すぎて、さら〜っとした映画の居場所がなくなってきている気もする。

本作もまたそんなトーンで進んでいくが、ラスト40分くらいからガラッとモードが変わる。詩人サイモンがロックスターのような扱いになるのだ。反対に落ちてゆくヘンリー。この辺からヘンリーにググッと距離を寄せてゆく感覚があった。この運の悪い男が最後どこに向かって駆け出すのかわからないが、順張りの人を描いたような気がした。
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