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ヘンリー・フールのakrutmのレビュー・感想・評価

ヘンリー・フール(1997年製作の映画)
4.2
ニューヨークの下町を舞台に、ふらりと現れたヘンリー・フールと名乗る得体の知れない男と、冴えない青年ヘンリーやその家族との奇妙な関係を描いた、ハル・ハートリー監督の3部作第1章。ハル・ハートリー独特の、真面目だか不真面目だかわからないような、脱力したタッチの映像は健在である。でも、『トラスト・ミー』や『シンプルメン』といった初期の作品に比べたら、まだストーリーがわかりやすいように思うので、ハル・ハートリー作品を避けている人にもオススメである。

ヘンリーと、サイモンや姉フェイ、母親との関わって起こる出来事が描かれていくが、主なポイントとしては、ヘンリーがサイモンの詩の才能を見抜き、最初は出版社に見向きもされなかったサイモンが成功していく様子と、元々自堕落で犯罪歴のあるヘンリーがさらに落ちていく様子の対比である。それでも二人は強い絆で結ばれていて、さらにサイモンとヘンリーが義兄弟になることによって、ますます関係は深まっていく。その本筋プロットに、いろいろな出来事が付け加わることで、より豊かな世界観が醸し出されていくのがとても印象的である。それとともに、多様な人種の人々が暮らすニューヨークの下町の雰囲気も好印象であり、ハル・ハートリー監督のニューヨーク愛を感じることもできる。それから、ラスト・シーンは、続編の『フェイ・グリム』につながる重要なシーンである。

印象に残った俳優は、サイモンを演じたジェームズ・アーバニアク。本作が本格的な長編映画のデビュー作であるが、映画の最初のほうの本当に冴えない地味な青年の雰囲気から、後半に見せる成功した作家としての堂々とした姿まで、見事に演じ切っている。その妹フェイ役のパーカー・ポージーも色気があって、なかなかgood!さらに、本映画がデビュー作である子役のリアム・エイケンも可愛らしい。続編の『フェイ・グリム』と『ネッド・ライフル』もぜひ楽しみたい。
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