とうじ

ニーチェの馬のとうじのレビュー・感想・評価

ニーチェの馬(2011年製作の映画)
5.0
希望は、時代精神に左右されることが多いのだが、絶望は常に形を変えずいつの時代でも永久にあり続けるのだという感覚が、本作をアナクロニックなものにしている。
シェストレム監督の「風」(1928)とかなり類似していることもあり、これが例え100年前の作品だとされても、内容の面ではあまり驚かないだろうし、逆に100年後の未来に作られた映画だとしても、納得してしまう。
本作を前にしては、時代の流れは止まり、その停滞の空虚さが、観客に向かって反射してくる、というような不思議な体験ができる。
本作の基盤となる部分は「ララランド」並のパスティーシュ(しかし、「ララランド」は食べ放題式に何でもかんでもお皿に盛り込んでいく感じだったが、本作はいかに削ぎ落とすかというところに美学を感じており、そういう違いはある)であることは間違いないが、そこにふと捉えられてしまった絶望と混迷の圧倒的な力によって、観客の魂が眩惑させられる。そういう意味で、本作は、広い映画史を見渡しても、かなり稀有な存在であるといえるだろう。
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