アニマル泉

リバティ・バランスを射った男のアニマル泉のレビュー・感想・評価

5.0
フォードとジョン・ウェインが組んだ最後の西部劇。フォードのリズムが瑞々しい。ウェインが保安官の帽子を床に落とす、すかさずその帽子をヴェラ・マイルズがジェームス・スチュアートに見事に蹴り込む、サッカーのアシストとシュートのような二人の敏捷な連携とマイルズの運動神経が素晴らしい。冒頭のリバティ・バランス(リー・マービン)達の馬車襲撃は、金庫を地面に投げるから始まり、殴り倒す、ムチ打ちとアクションの連打になる。給仕するスチュアートの足をマービンが引っ掛けて見事にスチュアートが倒れて皿の料理をぶちまけてマービンが大笑いすると間髪入れずにウェインがインして「俺が注文したステーキだ」と対峙する。流れるような華やかな痺れる演出だ。スチュアートにウェインが射撃を訓練する場面、スチュアートがペンキ缶を柵に並べると次々にリズムよくウェインが命中させてスチュアートがペンキまみれになるのも痛快だ。フォードの映画では誰かがペンキや液体まみれになる。
本作はとにかくよく「投げる」映画だ。マービンの新聞社襲撃の場面、ウェインが自宅に放火する場面、やたらめったら投げまくる、割りまくる壮絶さだ。「火」もフォードの主題だが、ウェインの放火の場面は哀しい。
スチュアートとマービンの決闘場面、スチュアートごしの二人のロングショットのワンカットで魅せるのがフォードの至芸だ。再現のショットもウェインごしのスチュアートとマービンのロングのパラショットのワンカットで魅せ切る。どちらも決定的ショットだ。スピルバーグ以降の監督ならば何十カットも重ねるに違いない。
スチュアートの白いエプロンは意表を突いた豊かなフォードならではの表現だ。
選挙演説会で馬が会場に乗り込んで、階段を駆け上がって壇上にまで登ってしまうワンショットは唖然とした。やはりフォードは「馬」の天才だ。
パラマウント、白黒ビスタ。
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