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リバティ・バランスを射った男のandesのレビュー・感想・評価

4.4
西部劇も下火となった1960年代に製作された西部劇挽歌。新時代の到来により去りゆく「西部」を描いており、セルジオ・レオーネのお気に入りというのも頷ける。
法と秩序=ランス、古き良き西部=トム、古き悪しき西部=リバティのポジションがしっかりしており、アクションは少ないながらも効果的で非常にスリリングな人間関係性。鼻っ柱が強いヒロイン、コメディリリーフの保安官や、肝が据わったピーボディなど脇も素晴らしい。配役は完璧である。
理想主義を掲げたランスが、不条理な暴力に打ち勝った方法は、結局"正義''の暴力であるのが、厳しい現実を突きつける。そして、古い時代を背負って消えゆくトムに涙するのだ。
かなり政治的な映画でもある。学校の場面が良い。黒人のポンペイが憲法の一節(法の下の平等)を暗唱するが、うまく言えない。「難しいから、みんな言えないんだ」。ヒロインの家系がスウェーデン系なのも移民国アメリカを表している。
さて、主人公ランスは名士になるが、それは「正しいやり方」だったのか。人を導くには伝説が必要なのだ。メディアに対する冷徹な目線にも感嘆する。
なお、ダイナーのシーンで、ランスがバランスに馬鹿にされるくだりは、「パワー・オブ・ザ・ドッグ」(2021)にオマージュされていると感じた。あちらも、対象的な2人の主人公や新旧の価値観などテーマに共通点がある。
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