ひろ

英国王のスピーチのひろのレビュー・感想・評価

英国王のスピーチ(2010年製作の映画)
4.5
イギリス王ジョージ6世の史実を基に、「くたばれ!ユナイテッド~サッカー万歳!~」のトム・フーパー監督によって製作された2010年のイギリス映画

第83回アカデミー賞において、作品賞、監督賞、脚本賞、主演男優賞の主要4部門を受賞した

久しぶりに本物の映画を観た気がする。素晴らしい脚本と俳優の演技が一体となった作品。観賞後の充実感といったらなかった。

史実的には、兄エドワード8世の「王冠を賭けた恋」の方が有名な出来事なのだが、世間では知られていなかったジョージ6世とオーストラリア人の言語聴覚士の物語を題材にしたのが当たりだった。

30年以上前から映画化の話はあったらしいが、ジョージ6世の王妃エリザベスが、生きている間は作品にしないという約束が守られ、自らも吃音症に苦しんだデヴィッド・サイドラーによって2010年に脚本化された。

ほとんどテレビを主体にやってきたトム・フーパー監督が、いきなりアカデミー賞監督賞を受賞したのには驚いたが、この若き監督が、実力派の俳優をまとめあげた事実は作品を観れば明らかだ。

この映画は、吃音症という障害に打ち勝ってハッピーエンドみたいな映画だと思っている人もいるかも知れないが、そんな安っぽい映画だったらアカデミー賞作品賞は受賞できなかっただろう。

内気で真面目で、史上最も無名で王になったジョージ6世。華やかな王族に生まれながらも、吃音症などにより、自分に自信のなかった彼が、自分に向き合っていく姿は感動的だ。このジョージ6世を観たら、誰もが勇気をもらえるだろう。

“善良王”と呼ばれ、国民から愛されたジョージ6世を演じたのは、2009年の「シングルマン」で惜しくもオスカーを逃したコリン・ファース。障害を演技すると過剰になりがちだが、ここまで自然に演じ、しかも王族の威厳と人間の弱さまで表現したのは、尊敬に値する。

ジョージ6世のごとく、真面目な人柄で役に真剣に取り組んだコリン・ファースのアカデミー賞主演男優賞受賞は、いち映画ファンとして嬉しい。

この映画はジョージ6世だけの物語ではない。彼の友となり、彼を救った言語聴覚士ライオネル・ローグも重要な人物だ。彼の記録はほとんどなく、脚本家の想像で書いていたら、彼の家族を見つけ出すことができ、この物語は真実により近づいた。

彼を演じたのは、名優ジェフリー・ラッシュ。彼自身もオーストラリア出身であり、歴史に埋もれたオーストラリア人に興味を抱いたジェフリーによって、この映画の製作が始まった。王族相手でも物怖じしない個性的なキャラクターを演じたジェフリー・ラッシュもオスカー受賞してもおかしくなかった。

そして、自分に自信のなかったジョージ6世を内助の功で支え続けたエリザベス王妃の存在は大きい。大戦中に、ドイツの空爆にさらされたロンドンにジョージ6世と残り、勇気を示したエリザベス王妃は、亡くなった後も愛され続けている。あのヒトラーが一目おいていたんだからすごい女性だ。

そんな偉大なる女性を演じたのは、ヘレナ・ボナム=カーター。常にジョージ6世を支え続ける威風堂々たる様は、一番かっこよかった。夫のティム・バートン作品での個性的なキャラクターのイメージが強いかもしれないが、この見事なまでの変貌ぶりは必見。彼女の演技力には脱帽です。“赤の女王”の次がこの役なのが笑っちゃった。

他にも、エドワード8世をガイ・ピアーズ。ジョージ5世をマイケル・ガンボン。ウィンストン・チャーチルをティモシー・スポールが演じるなど、脇役も磐石の布陣。やたらハリポタのキャスト多いなってのだけ気になった(笑)

スピーチに始まりスピーチに終わる作品だが、第二次世界大戦勃発により不安に駆られる国民を鼓舞する最後のスピーチのシーンは心に響いた。その後のエリザベス王妃の一言もよかったな

この「英国王のスピーチ」は、ただの史実を描いた伝記映画ではなく、ユーモアもあり観た人の心に火をつけるような映画なんです
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