ポンコツ娘萌え萌え同盟

火星のカノンのポンコツ娘萌え萌え同盟のレビュー・感想・評価

火星のカノン(2001年製作の映画)
3.8
私は物語で恋愛を客観的に捉えるが、恋愛の感情は人生の中でない。だから明確に恋愛観は定まっていないし、本作の登場人物の誰にも感情移入はできない。不倫男の公平にも、その相手であり、本作の主役の絹子にも、もう一人の主役の聖にも。ましてや真鍋にも。
だからこそ本作の痛々しい恋と幸福を軸に人間達映した映像と私個人的な思想にすれ違いを起こさず、一つの恋愛観と鑑賞できるが、批判や肯定はできない。だから100%本作の鑑賞に適した人間ではない。

不倫の危ない恋、痛々しい恋、ストレートだが一筋縄にはいかない恋愛感情、恋愛による闘い、セックスを物語にフィルムに映すが、カメラにもシナリオにも激しいテンポや展開、勢い自体はなく、静かに内容が進む。
物語を前提とした上で、物語そのものを映し俯瞰的に内容を捉えるより、登場人物の人間性を映すことに長けた構図とカメラに本作の魅力がある。
登場人物自体も多くなく、多くのエキストラを映した作品でないからこそ、ストレートに「火星のカノン」の星にいる、登場人物の人間性と恋愛、雰囲気フォーカスを当てた内容が撮れたのかもしれない。

特にビルの屋上にいる絹子と聖を映しながらも背景の奥では電子看板の光彩豊かに光る東京を映している場面が印象に残る。本作は東京の喧騒とは切断された内容だし、静かな作品だからこそ雰囲気が出ていると思うから。
再三書くが物語の強調より人間を映した分、本作に感情移入を起こすはできなかったが、何だか不思議な感覚につつまれる作品だった