ベビーパウダー山崎

ふたりだけの舞台/彼と彼女のコメディのベビーパウダー山崎のレビュー・感想・評価

3.0
ジャック・ドワイヨン、この家、なんとなく見たことがあるぞ。古びたけど『泣きしずむ女』で撮影していたお前の元自宅じゃないのか?
アラン・スーションが、かつて住んでいた家にジェーン・バーキンを連れてきたからの二人芝居。ドワイヨンと付き合っていたころのバーキンと、どう見てもドワイヨンの分身を演じているスーション。この「家」の実際の記憶込みで、二人のリアルな関係性をドラマに落とし込み、それをエチュード含めて80分の映画にしたのではないかと邪推する。二人芝居だが、家の「過去」(バーキンが知らなかったころのドワイヨンの生活)がバーキンを苦しめる作りになっていて、一応いつもの三角形の図にはなっている。狭い一本道で鉢合わせしたお互いの車が、バックすることも出来ないので、ただ前へ前へと激しくぶつかり合っているだけのような不毛な映画。
バーキンはドワイヨン映画の三本目で、これがラスト。取ってつけたような白々しいハッピーエンドだが、この時点で二人の愛はすでに消えかかっていたのではないか。男と女として、なにもなくなってしまった寂しさを誤魔化すため、あえてギャグっぽく撮っていないかドワイヨン。冷めた笑いは痛々しく、渋谷TSUTAYAで借りたビデオテープの限界まで来ているノイズが、俺には二人の「叫び」のように聞こえた。