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長崎ぶらぶら節のkojikojiのレビュー・感想・評価

長崎ぶらぶら節(2000年製作の映画)
3.9
 三味の音を聞いたことはあるだろうか。
私の愛人、と言っても肉体関係もなければ恋愛感情もない、そう呼んでいるだけのただの友達なのだが、長崎くんちで今、三味を弾いている。彼女が三味を習い始めた頃、彼女の家でちょっとだけ練習を聞かせてもらったことがある。音を合わせる間にも、すでに三味が主張を始める。不思議な感覚。そしてつまびくと、素晴らしい音色。こんなに三味の音とはいいものかと驚いた。
 その後この映画の舞台となっている「花月」で何度か芸妓の三味を聞いたが、残念ながら、この時ほどの感動はなかった。
 しかし、今回、吉永小百合がきかせてくれた。弾いてる姿も美しい。やっぱり三味はいい。

 最初ぎこちない吉永小百合の長崎弁が、後半は次第になれて、最後には可愛いと思うようになる。
「会いたかー」
愛八の最後の願いが愛おしく心に響いた。
泣けた。

 「長崎ぶらぶら節」
 江戸時代の初期から明治初期にかけて長崎市内を中心に歌われた作者不詳のお座敷唄。昭和初期にレコード化され全国に知られるようになり、長崎くんちの本踊に欠かせない長崎を代表する民謡となった。

 昔からなんとなく聞いてはいたが、本格的な出会いは、友人の結婚式の出し物のために1ヶ月間、この踊りを練習したのがきっかけだ。

「長崎名物 はた揚げ盆祭り
秋はお諏訪のシャギリで氏子がぶーらぶら
ぶらりぶらりというたもんだいちゅ

遊びに行くなら花月か中の茶屋
梅園裏門たたいて丸山 ぶーらぶら
ぶらりぶらりというたもんだいちゅ」

 なんともいい唄だ。雰囲気があって、踊りも粋。この唄を主人公の愛八は小さい頃、日見から長崎に売られて行く途中で聞いている。

 散財で身上を潰した五島町の古賀十二郎(渡哲也)に、愛八は唄探しを誘われる。
「な、愛八、おうち、おいと一緒に、長崎の古か歌ば探してあるかんね。」(私だったら さるこうか?というかな)
こんな調子だ。
 初老を迎え生きる目的を見失いかけていた愛八に、古賀の誘いは一筋の光明であった。共に夢を追う決意をした二人は歌を探して長崎を彷徨し、やがて埋もれていた「長崎ぶらぶら節」を探し当てる。それはあの日、日見から長崎に行く途中、聞いたあの唄だった。

#1397 2023年 431本目
監督: 深町幸男
原作者: なかにし礼
映画脚本: 市川森一
受賞歴: 日本アカデミー賞 最優秀主演女優賞

 美人が本当の力を見せたら、こんな風になるのか。
 吉永小百合の真正面からの着物姿の美しさは感嘆するしかない。
綺麗だ!
しかも着ている着物がどれもが好きな色と好きな柄。それを彼女が見事に着こなして、ものすごく似合っている。
 あの渡哲也ですら、相手役として物足りなく感じるぐらいだ。
ため息が止まらない。美しくて。
三味をひく姿も唄もいい。
ただ残念なのは、この「ぶらぶら節」を彼女に踊らないこと。踊って欲しかった。

実話ではないが、主人公の愛八は実在の人物。彼女をモデルにした映画だ。
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