3月2日よりシアター・イメージフォーラム他で開催予定の名匠「ピーター・グリーナウェイ レトロスペクティヴ 美を患った魔術師」の特集で上映される『数に溺れて』をご紹介。
数を数えながら縄跳びをする不思議な少女。
ピーター・グリーナウェイは毎回何かに変質的にこだわった作品創りをするが、今回は「数」。
途中から「あれ?変なところに数字が付いてるなぁ」と気がついたが、実は冒頭の「1」から始まって、作品内の様々なところに数字が隠れていて、最後は「100」で終わるという、意味不明な演出が施されている。
四六時中何かを数えている少年「スマット」。
羊を数える。蜂を数える。数に関係するゲームなども登場し、ともかく本作は「数」にこだわる。
これはグリーナウェイ作品全般を通して言えることだが、画面の中に林檎や花といった静物を配してみたり、その中で全裸の女と戯れるなど、たいへん西洋絵画的。
また逆に、冒頭の死んだ鳥を吊るしてみたり、蟲・蛾・カタツムリなどで埋め尽くされた気持ちの悪い画面も多い。
美しい映像の中に、常に死と不気味さが共存する。
シシー・コルピッツという同じ名前を持った3人の女性が起こす3件の殺人事件。その3人の女性を狙う検視官。
サスペンスというジャンルの割には、感情の起伏があまり感じられない演出もウェス・アンダーソンに似ている。いや、シンメトリーのこだわりも、ノンエモーショナルな演出もウェス・アンダーソンに影響を与えたのだろうな。
「数」と「愛欲」にまみれたサスペンス『数に溺れて』は3月2日以降、4Kリマスター版にて上映予定です。