伊達巻

数に溺れての伊達巻のレビュー・感想・評価

数に溺れて(1988年製作の映画)
4.8
めちゃくちゃに良い。70番代の記憶が抜けている気がする(便利)が、超面白かった。夜空に散らばった星々が煌めくみたいな不規則さで数え上げられていく100の数。卓上に、看板に、鍵に、声に、あらゆるところに数が潜んでいて、見つけたつもりが気付けば違う位になっていたりする。かと思えばとうの昔に通り過ぎたはずの数が普通に現れたりする。少年はいくつかのゲームを好んだが、この映画自体もまたひとつの大きなゲームになっている。秩序を作り出すための道具であるはずの数字は役目を放って遊んでいるかのように散乱しつつ、1と100の間で鮮やかに物語を紡いでいく。そうして数を探しながらつい儚き人生に当て嵌めた面白さとか面倒臭さとかを見出したくなる。そしてまたこのゲームは3人のシシーという名の女たちによる静かな復讐劇である。展開的に大好きな『コックと泥棒、その妻と愛人』を思い出すが、こちらには一歩引いたような静けさがあって、そんな作風の違いも印象的だった。海を泳ぎ切れなかった男たち。だけどその哀れさも(存分の皮肉と共に)沈みゆく小舟から見えた花火によって祝福されているようで、限りない悲哀の感が漂っている。美しくて面白い映画。何度でも観たい。
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