大道幸之丞

軽蔑の大道幸之丞のネタバレレビュー・内容・結末

軽蔑(2011年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

中上健次原作・遺作の映画化。

二宮一彦(カズ:高良健吾)がこれまでのイメージを覆すキャスティング起用に応えている。猫を思わせる女、矢木真知子(鈴木杏)もいい。

一昔前の原作なのでどうかなあと思っていたが、大胆なキャスティングと劇中にあしらわれる憂歌団をはじめとする楽曲が小気味よいテンポを生み出している。

カズの郷里ではカズが資産家名士の嫡男である事は識られていることから、一緒に連れ帰って来たトップレスバーのポールダンサー真知子に対する視線は冷たい。実家においては完全拒否。

方や暴走族時代からの仲間たちは昔のカズとの習慣をそのまま真知子にも押し付け、カズ不在時にもズケズケと勝手に家に入り込んでくる。
——しかし周囲の反対がむしろ二人に愛することをいびつな形で加速させてしまい。度々二人はお互いを見失う。そんな時には歌舞伎町に舞い戻ってみたりもする。

この二人はいちゃつく事が多い割に行き先に何かが生まれる(纏まる)気配が微塵も感じられない。

山畑万里(大森南朋)の徹底した悪党ぶりも見もの。その反動として思わずカズを「頑張れ!」と応援してしまうし、その最後の殺され方はスカッとしてしまう。

最後の主人公の死は病院に向かっているのか判然としないタクシー車中で、むざむざ死なせてしまったように感じさせるのは気になった。

結局二人は「愛する人がいる状態」を愛している、“愛されたら愛し返す「愛し合う者同士”の姿に憧れているのでは」と感じた。それは割と「相手の事をよくわかってないな」と感じさせる場面が多く出てくるからだ。それは「言葉同士のやり取り」ではなく行動に常ににじみ出てはいなかったか。