イチロヲ

すべてが狂ってるのイチロヲのレビュー・感想・評価

すべてが狂ってる(1960年製作の映画)
4.5
母親の愛情に飢えている不良少年(川地民夫)が、世間ズレした売春少女と意気投合しながら、行き場のない怒りをぶちまけていく。60年代前期に隆盛した、ビート族を背景にしている、ヒューマン・ドラマ。一条明・著「ハイティーン情婦」を原作に取っている。

ヒッピーの前身ともいえるムーブメント、ビート・ジェネレーション(ビートニク)が影響をもたらしていた時分の物語。戦争の余波を抱えている親世代に同調することができず、生きる価値を見失った主人公が、刹那的かつ露悪的な行動を繰り広げていく。

女優陣では、主人公とコンビを組む少女(祢津良子)と、予期せぬ懐妊に悩まされる女子大生(中川姿子)が、事実上のダブルヒロインとなる。新人の吉永小百合は、主人公とは別世界に住んでいる令嬢の役柄で登場。バイタリティ溢れる演技を披露してくれる。

1960年から70年代前半に掛けての「ビート、全共闘、シラケ」の文脈を辿るためには、必須科目となる作品。時代の転換を追体験することができる作品として、いつまでも心に残して置きたくなる。
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