カプチンバード

グラン・トリノのカプチンバードのレビュー・感想・評価

グラン・トリノ(2008年製作の映画)
5.0
アメリカのかかえる問題を一人の老人を通して描く、重厚な映画だと思う。

元軍人でポーランド移民の老人ウォルトが妻を亡くした葬式のシーンから話は始まる。元軍人だが本人としては老兵だし、アメリカのヒーローでもある。

しかし今それは過去のものだ。星条旗、朝鮮戦争のメダル、銃、グラントリノ…ウォルトの尊厳が老人になって脅かされる。そのまさにクライシスの時期にモン族の家族と出会う。この出会いからウォルトは毒突く面倒くさい爺さんから再生する。本当の彼の尊厳は物や勲章や殺した人間の数ではなく、方法でもなく、何かを守ろうとする心そのものだ。

生と死について神学校をでたばかりの青二才に説教するシーンには我々はぐうの音も出ない。「お前たちは何にもわかっとらん!」まさに北の国からで大滝秀治に怒られてる時のようだった。

最後にウォルトがタオの姉に乱暴したギャングに復讐の銃を撃たなかったことが本当の救いだと思える。これが銃社会アメリカの悲しい末路である、とクリントイーストウッドが警鐘しているようだ。死に様が一番の教育ということか。

結局最後にこの闘争に終止符を打ったのは銃ではないのだ。

クリントイーストウッドはかっこいい
カプチンバード

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