千年女優

グラン・トリノの千年女優のレビュー・感想・評価

グラン・トリノ(2008年製作の映画)
5.0
朝鮮戦争出兵時の殺人に対する罪の意識に苛まれながら自動車工を50年勤め上げ、フォード製グラン・トリノを愛車とする昔気質の老人ウォルト。妻に先立たれ後は偏狭な性格から家族との関係が悪化して孤独な隠居生活を送る彼が、隣家に住むアジア系移民のロー一家と出会い不器用ながらもロー家の長男と交流する様を描くドラマ映画です。

先の見えた人生の中で自らの背負った業に向き合う人の生き様を描くクリント・イーストウッド監督作品の代表作のひとつで、偏屈で孤独な老人と近所に住む気弱な少年との心の交流というありふれた物語ながら重厚感と説得力に満ちた作劇でイーストウッドの監督としての力量、ひいては考える人としての洞察力や視野の広さに圧倒されます。

ベトナム戦争でアメリカに組したため祖国を追われたモン族の一員ロー家が表す、アメリカひいてはグローバル化の進む世界が背負う負の側面。その一方で古き良き時代の象徴であるウォルトが行う彼なりの贖罪と移民の少年への魂の継承は、その失敗を取り返しさらなる発展に向けたリカバリを可能とする文明の力強さを感じさせる一作です。
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