序盤からいい映画の匂いがしますね。
エンターテインメント色は抑え気味で、地味ですが、
細かい機微をうまく捉えて、丁寧に作ってある感じがします。
イーストウッド演じる頑固アメリカ親父の、
悪態、凄み、ユーモア、優しさのバランスが絶妙なので、
飽きることなく、見続けられます。
物語の展開としては、ちょっとしたきっかけから、
当初、野蛮人と嫌っていた隣人のモン族との交流が始まり
家事手伝いに従事するその家の息子を、口汚く叱咤しながらも、
大人の男の作法なり仕事なりを教え込んでいくことになります。
そのうちに家族以上の愛着を持って接するようになり、
最後には命を掛けて、守ることになります。
単純でわかりやすい話ですが、朝鮮戦争での出来事や、病など、
最終的な決断への必然性が、
物語の中にごく自然に練り込まれている感じがします。
一方で、イーストウッドの二人の息子およびその家族は、いい被害者なわけで、
そこらへん、作り手として、どこまで考えていたのかは気になるところですね。
ただ単に欲の皮の突っ張った思いやりのない家族として彼らを描きたかったのか、
例えそうだとしても、親である以上、自業自得としか言いようがない話ですが。
たぶんそこまで単純ではなくて、実の親子は実に複雑で難しい
と言うことを暗に示しているようにも感じましたね。
などといろいろ考えを巡らせる余地の大きい作品ですね。