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グラン・トリノのkojikojiのレビュー・感想・評価

グラン・トリノ(2008年製作の映画)
4.3
2008年 アメリカ 監督:クリント・イーストウッド 脚本:ニック・シェンク 
2022.08.24視聴-386 評価4.3
● クリント・イーストウッド(ウォルト)
● ビー・ヴァン(タオ)
● アーニー・ハー(スー)

 妻の葬式から始まる。
 その時のクリント・イーストウッドのイラついた顔がアップで映る。もう、既にクリント・イーストウッドの世界に飲み込まれている。社会から外れた頑固ジジイが全面に出ている。

 この爺さん、何に怒っているのか。朝鮮戦争で、若い朝鮮人を殺し、同僚も死なせてしまった。そんな自分に怒っている。
 子ども達とも溝ができている。子ども達は身勝手に育ち、彼が何を考えているかなど何の関心もない。ただの頑固ジジイだ。
 
 近所は東洋人に家を買い取られて、移民ばかりの地区になっている。

 ウォルトは移民を毛嫌いしていたが、隣の家のスーとタオを助けたことから親しい間柄になる。
 子ども達よりずっと彼らの方が身近に感じる
 次第にそんな思いを抱くようになる。

 ある日、モン族の不良グループにタオが絡まれ、さらに姉のスーは暴行を受ける。
 ウォルトは、このままではタオにもスーにも平穏な日々は来ないと判断し、自分のやり方で報復する決意をする。
 
 若い神父が亡くなった妻から頼まれたとして、繰り返しウォルトに懺悔を迫る。
 彼は頑なにそれを拒む。この若い神父との会話で、彼が何に苦しみ、上部だけの言葉で救いなどないと強く思っていることが浮き彫りになる。

 ラストは、どこかでそうなるのではないかと思いながら、できたらそうして欲しくないと思っていた結末だった。
 やっぱりウォルトだったらそうするだろう。

 クリント・イーストウッドの映画に出てくるこの頑固ジジイは、彼の映画のテーマのようだ。どんな役も底部にこの爺さんの思いが流れている。社会に怒り、自分を責めている。彼は何を求めているのだろうか?

 「何がお前にわかる?」とウォルトに言われそうだ。

 明らかに、「クライ・マッチョ」に繋がる映画。傑作だと思う。
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