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グラン・トリノのsukekoooのレビュー・感想・評価

グラン・トリノ(2008年製作の映画)
5.0
映画の始まりは、妻の葬儀のシーンからである。強い嫌悪感の表情で、いかにも気難しそうな男・ウォルト(クリント・イーストウッド)が向ける視線の先には、明らかに気が合わなそうな息子家族たちが、暇を持て余した様子で葬儀に参加している。所謂表面上の息子との関係は冷ややかで、父の扱いに困っているという様子が伺えるも、体裁だけは良くするために何度かウォルトに接触しようとするが、強く拒まれてしまう。
誰にも干渉されたくないウォルトであったが、大切に磨き上げているグラン・トリノが強奪されそうになることをきっかけに、隣人であるスー(アーニー・ハー)、タオ(ビー・ヴァン)との交流が始まる。スーに招待された祝賀会でモン族にもてなされているウォルトの表情には、幸福感と孤独感の間で揺れているように見える。
吐血を繰り返し、自分の死が近付いていることをウォルトは誰にも相談しようとせず、気弱で小柄な少年・タオに一人の男として生きていく術を教える。年上の男性との交流の仕方、仕事、生活、どれをとってもタオには初めての経験であり、同時にウォルトとの関係もより強いものになっていく。
ウォルトが度々、朝鮮戦争に出征したこと、その時に見たこと、人を殺してしまった記憶について触れる。自分の余命が短いことに反して、「生と死」「救済」「懺悔」を経て、これから生きていくタオやスーのことを、血縁である家族よりも特別に思っているのが伺える。
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