ろっこつバキバキ丸

グラン・トリノのろっこつバキバキ丸のレビュー・感想・評価

グラン・トリノ(2008年製作の映画)
4.6
物語に入り込むまで退屈に感じたのが嘘のように中盤以降の引き込まれ方が尋常じゃなかった。
残酷さと温かさが入り混じって 気づけば最後は声を出して泣いてしまった。

優しさとかでは言い表せない。
覚悟をした人はなんと美しいんだろうか、と。

途中までは 戦争帰りの元軍人・典型的なアメリカ気質の堅物おじいちゃんウォルトを、隣人にあたるアジア系移民の家族(特に人生に迷う少年・タオ)が懐柔し人間味を取り戻させるほっこりファミリームービーだとばかり思ってたのに😢

国のために戦ってきた誇りと 人の命を奪った過去への懺悔と 変わっていく町並みと、離れていく家族と。

ウォルトを取り巻く環境や 彼が歩んできた人生は本当に孤独で悲しくて

だからこそ、タオ、またスーとその家族との出会いが残り少ない彼の偏屈な人生に変化を与えはじめたときは なんだかこちらまで嬉しくなってしまって。

タオにとってもウォルトとの出会いは 卑屈で先の見えない泥沼の中から 這い出すきっかけをくれたようなものに思えました

そうやって段階を追って、互いが互いの大切な友になった途端、容易くもチンピラの手によってそんな幸せは気紛れに壊されてしまって

家の襲撃から家での神父との対話シーンまでの過程が本当にしんどかったし
現実とは不条理なものなのだと突きつけられている気がして 胸が苦しくなった。

最後のシーンは圧巻。
覚悟を決めたウォルトは、鳥肌が立つほどかっこよかった。

内容を一括して「よかった」って 一言では言えないけど、観たことについては 観てよかったし、人生において触れることができてよかった作品だなとは思う。

画面の静けさとは反対に、観た後の放心具合がすごいし 思い出し涙がぽろぽろ溢れるレベルでは相当なインパクトを持っている映画でした。