よしまる

女王蜂のよしまるのレビュー・感想・評価

女王蜂(1978年製作の映画)
3.7
 先月末に間に合わなかったマンスリー金田一は「女王蜂」。市川崑のシリーズで唯一未見の作品なので超楽しみだった。こういう企画でもないとわざわざ観ることもなく、誘ってくれたlarabeeさんにあらためて感謝🤘

 前作「獄門島」までで主役級だった女優たち、高峰三枝子、岸惠子、司葉子が再登板して共演。現在で言うスパイダーマンのようなファンサービス!

 中身はこれもう完全に水戸黄門に代表されるワンパターンを楽しむ映画となっていて、それはもちろん楽しいのだけれど、そこにどうアレンジを加えるか、フェイントをかけたりゴージャスに盛ったりの「色付け」がシリーズ物の鍵となる。そこのところを市川監督と凄腕のスタッフたちがあの手この手で仕掛けてくれる。

 wikiで知ったのだけれどを撮影は2班に分かれ、B班は演出松林宗恵+撮影木村大作というマジかの豪華さ。しかもめっちゃシームレスすぎて驚いた。

 個人的には松林と言えば帰ってきたウルトラマンの終盤を盛り上げた監督。偶然にも「女王蜂」には2号ライダー一文字隼人のほか、ミラーマンとバロム1、主役が3人も出ていて特撮ファン必見!
 もちろん、小林おやっさん昭二もレギュラーとして盤石の構えだw

 本作のゲストでもっとも光り輝いたのは伴淳三郎。「うだつの上がらない地元警察の巡査」という役どころも本シリーズのキモのひとつだけれど、伴淳はコメディリリーフとして歴代最高のお巡りさんを演じている。伝説の語り部としてはあまりお役には立ってないけれどww

 さていつもながらの「見立て殺人」に翻弄される探偵金田一耕助。今回もまた見事に次々と死人を生み出してしまうww
 まあ金田一が早々と見立てを推理して殺人を未然に防いでしまうと事件ではなくなってしまうので仕方のないところ。
 それでもこんなに面白いのは、もはや横溝のミステリーはとりあえず置いといて、最大限のインパクトを狙った殺人の映像美、加藤武の名推理、金田一のおよそラブロマンスとはほど遠い、けれども色気のある語り口、そうした本シリーズの魅力がさらに熟成されているからに違いない。

 今回は血筋やお家騒動よりもむしろ男女の愛憎劇が主体におかれ、仲代達也と岸恵子の悲恋は胸に迫るものがあった。

 割とあからさまなミスリードが多いのをミステリーの醍醐味と取るか無駄と取るかで評価の分かれるところかと思うけれど、安定感と少しのフェイントという点においては予想を上回る快作。特にラストだ。
 珍しく帰りの電車内までしっかりと描き、加藤武に粋な台詞を言わせる。
 これがとてもいい。やはり彼無くしてこのシリーズは成立しないのだと確信させるのみならず、単に「わかった」だけの男ではないという見事な「色付け」だ。

 ああそうだ、「口紅にミステリー」の時点で分かっておかなくちゃ、だよね💄