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コブラのbackpackerのレビュー・感想・評価

コブラ(1986年製作の映画)
3.0
みんな大好き80年代筋肉アクションスター、俺たちのシルヴェスター・スタローン(以下、スライ)が、ロッキーとランボーに続く第3の看板キャラクターとすべくぶち上げた、アウトロー刑事。その名は、マリオン・コブレッティ。通称は…………コブラ!!

一部界隈では大変な人気を誇るヒット作『コブラ』。本棚整頓中に特装版BDを発掘した為、久方ぶりに鑑賞しました。
やっぱり冷えたピザを鋏で切って食うシーン、最高ですね!!

黒づくめ&ティアドロップのグラサン&革手袋の厨二ファッションに身を包み、口にはマッチ棒を咥え、冷蔵庫内の卵のパックに銃の手入れキットを保管する等、一挙手一投足の全てからキャラ作りに余念がないこの主人公。
元々は『ビバリーヒルズ・コップ』に出演予定だったスライが、脚本を『ダーティーハリー』系脳筋暴力映画へ書き換え、主人公の名前まで"マリオン・コブレッティ"に変更したため、降板させられます。
折角の脚本をボツにするのも惜しかったのか、『ランボー/怒りの脱出』で組んだ職人ジョルジ・P・コスマトスに監督させて、ちゃんと映画にしてしまったってんですから、本作は出自からして面白いですね。
製作会社がイスラエルからの刺客メナハム・ゴーラン& ヨーラン・グローバス従兄弟の"キャノンフィルムズ"って時点でお察しですが、私のような貧しいオツムのボンクラ共が当時も大喜びしていたのは間違いなく、故に今でも底堅い人気があるんでしょう。
なお、コスマトス監督のコメンタリーでは、「コレが良くない」「ロケ地がダメ」「見返してみると酷い」といった作品批判が頻繁に発言されています(スライのことはベタ褒めしてますが)。自分の作品に納得がいかないその姿勢、監督として大変素晴らしいですね。


本作は、冒頭の「スーパーマーケット立てこもり犯ぶち殺しシークエンス」が全てと言ってもいいくらい、魅力の全てを始まりに置いてきた(むしろ、そこで精魂尽き果てたのか)作品です。

イカれた英雄願望持ちの犯人が、店ごと爆弾で吹っ飛ばすと脅しても、「やれよ。俺の店じゃねぇ」とどこ吹く風なスライ。
挙句「お前は病気だ。俺が治療してやる」と宣言した後、犯人の太腿に投げナイフをお見舞い。ついでに6発の鉛玉までご馳走してあげる大盤振る舞い。無論犯人は死にました。なんてぇ気持ちのいい始まり方なんだ。もうこれだけでお腹いっぱいですよ……。

でもそれだけじゃ終わらないのが、筋肉と暴力のハイカロリーなマリアージュ料理を提供するスーシェフ・スライの良いところ。
その後もひたすらこんな調子で進んでいくスライは、犯人逮捕なんてピクリとも考えず、出会った先から即処刑。
クライマックスのタイマンバトルでは、「法律はここまでだ。今から俺の出番だ」と犯人に告げると、"フック串刺し&火炙りBBQ"という、焦臭い処刑でフィナーレを迎えます。
いったい全体、コレのどこが刑事だというのか……。

50年型マーキュリー(スーパーチャージャー&ニトロ搭載)のイカれ具合や、ヤティマティックとかいうサブマシンガン等、やたらカッコいい装備品を携帯するところもコブラ刑事の魅力ではありますが、常軌を逸したトンデモ具合には、まったくおバカの度が過ぎますね。
いったい全体、コレのどこが刑事だというのか…………。

そんな低偏差値映画ではあるものの、全盛期のスライのシュッとした横顔、引き締まった筋肉、小粋な暴力が素晴らしく、好きなんですよねぇ。
だけどやっぱり、いったい全体、コレのどこが刑事だというのか………………。
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