あんず

春の雪のあんずのレビュー・感想・評価

春の雪(2005年製作の映画)
3.7
劇場鑑賞以来の再鑑賞。妻夫木聡の熱烈なファンではないが、昔から好きな俳優で彼が出ている作品は観ることが多い。WOWOWが『ある男』放送記念で妻夫木聡特集をしてくれてた。

「瀬を早み 岩にせかるる 滝川の
われても末に 逢わむとぞ思う」
冒頭の百人一首の如く雅な世界の恋愛映画。

それにしても、こんなにゆったりしていたっけ?という位、言葉や所作がゆったりしていて、間も多かった。それ故、内容の割に長い。タイパ重視の人は絶対観れない作品だろうな。私にはそのゆったりした時の流れが新鮮で心地好かった。最近の作品は話すスピードも展開も速いような気がする。

公家出身の貴族のお姫様の聡子(竹内結子)の登場シーンは、ハッとするほど美しく、丁寧で美しい話し方や身のこなしにはうっとりした。和装に洋装、豪華な衣装も素敵だった。

聡子は妻夫木演じる拗らせ男子の清顕を「清様」と言って慕う。一方、清顕は若さゆえなのか性格なのか、富も権力も持つ者の傲慢さからなのか、素直になれないで聡子を振り回しまくる。私が聡子の友達なら「そんな男、やめときなよー」と言うに違いない。

なぜ聡子は盲目的に清顕を好きなのかは良く分からない。けれど、まだ日本に貴族制度のあった時代、庶民には分からぬ一筋縄では行かない、本人だけの問題ではない恋愛や結婚というものがあったんだろうというのは感じられた。

清顕が聡子に輪廻転生の話をするシーンを観るのは、今となってはせつなすぎる。
あんず

あんず