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機動警察パトレイバー2 the Movieのsushiのレビュー・感想・評価

3.8
「見る」神に対する「見られる」虐げられし者の反逆。

『攻殻機動隊』でもそうだったが、本作でも「見る」「見られる」の関係がテーマとなっている。両者には明確な力の差があり、後者は虚構の壁(それはテレビ画面や映画の銀幕を指す。本作では光のモチーフが特に重要である。)を通して前者に認識されるが、後者は大きな矛盾をはらむ紛れもない現実でありながら、前者はそれを現実感のない(眩惑的な光を発する)映像としてしか捉えることができない。後者は前者の矛盾を肩代わりするが、常に前者によって虐げられている。柘植を除く本作の登場人物たちは、基本的には「見られる」側に位置し、「見る」側の無責任な行為に振り回されるが、一方で戦争という現実に対しては「見る」側である。このように「見る」「見られる」の関係は相対的なものであり、さらに時間が進むにつれて変化することもあるため、常に複雑な様相を示す。

柘植はもともと「見る」側だったが、(なぜか)テレビの向こう側へ飛び出して現実を知り(異国の地で"聖痕"を受ける)、そして日本に帰国してからは、かつての自分と同じく「見る」側の日本人たち(この中でも官僚と現場の人々で「見る」「見られる」の関係がある)を、さらに上の次元から「見る」ために彼らの狭間にあった壁を撹乱する。それは橋の爆破として象徴的に表される。

ということまではなんとなく理解したけど、結局彼が何をしたのかは分からなかった。一応、復讐だとは思うんだけど、ここまで冷静に考えられるならこんな事ををやるはずが無いだろう。つまり、いつもの押井守の得意技で"カッコいい"言葉で言いくるめて分かりにくくしてるだけで、中身は何にも無いんだと思う。

柘植と南雲しのぶの逢瀬はロマンチックだった。次々に橋を爆破するシーンの直前で、日本橋の下で密会するっていうのがなんとも切ない。ラストで確実になるが、後藤さんにとって南雲さんはすでにここで彼岸に渡ってしまったのだろう。
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