CANACO

エクソシスト/ディレクターズ・カット版のCANACOのレビュー・感想・評価

3.9
ウィリアム・フリードキン監督初鑑賞。1973年作品で、「オーメン」(1976年)、「ポルターガイスト」(1982年)より先の公開。昔、深夜のテレビ放送で“スパイダー・ウォーク”を見て以来、たぶん30年ぶりくらいに再鑑賞した。

思春期で何もしていないのに、下ネタ大好きで底意地の悪い悪魔に取り憑かれた、世界一かわいそうな少女・リーガン。医師たちは検査だ検査だと身体を調べるがどこも異常がないため手を打てない。その間に、どう考えても少女の所業ではない粗野な言動は悪化し、酷い形相に変貌してしまうリーガン。そのリーガンに敬虔なカトリック教の神父2人が対峙し、悪魔祓いをする物語。

この作品がすごいのは、メリーランド悪魔憑依事件という実話を基に作られた原作があり、(本当に悪魔がやったのかどうかはさておき)“実話そのまま”の部分が多いこと。原作者と脚本家は同じウィリアム・ピーター・ブラッティで、(多数の賞がノミネート止まりだったが)アカデミー脚色賞を受賞している。

そして、監督のウィリアム・フリードキン監督はリアルシチュエーションを追求する人で、吐く息が白くなるようリーガンの部屋を実際にクーラーで冷やしたり、緊張感や恐怖感を引き出すためにショットガンを撃って威嚇したり(苦笑)、役者をビンタしたりしていたらしい。全体的にたちこめる暗さ、鬱々とした空気は、そうした“演出”(苦笑)により生まれたものかもしれない。

今見直しても本当に怖いし絶望感ある。ホラー苦手なので辛いが、作品の完成度は高く、名作といわれるにふさわしいと思う。

リーガンを演じているのはリンダ・ブレアで当時14歳。アカデミー賞あげてよいくらいの勇気と熱演だと思うのだけど、ノミネートのみ(ゴールデン・グローブ賞助演女優賞受賞)。その後役にあまり恵まれてないようで、そこが意外で残念。

エレン・バースティンが演じる母親は、「ポルターガイスト」のように家庭円満ではなく、夫が家にいない。ちょっといい仲だったバークさんまで奪われて、孤独感を強めていく。

ジェイソン・ミラー演じる若き神父・デミアン・カラスは、「リーガンの救い」と「自身の救い」のために行動する神父をよく演じていた。母親とカラス神父、どちらも苦悩、優しさが滲み出ていた。2人の存在が人間ドラマ要素を強めたので、ただの悪霊退散もので終わらなかったんだと思う。

実際にイエズス会の悪魔祓いを受けた少年・ロナルド・エドウィン・ハンケラーさんは、その後NASAでエンジニアとして40年ほど勤め、2021年に脳卒中で亡くなったらしい(享年85)。
自身の体験が、ここまで派手な悪魔祓いものとして全世界に公開される気持ちはどのようなものだったろうか。
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