かえで

時をかける少女のかえでのレビュー・感想・評価

時をかける少女(2006年製作の映画)
3.8
10周年BD-BOX発売記念フィルム上映@テアトル新宿にて。何度も観ている作品ではあるけれど、劇場で鑑賞するのはこれが初めてだったし、久しぶりに観るからなのか自分が歳を取ったせいなのか、今までとは違った見方ができました。

これまではこの作品を「切ないラブストーリー」だと位置づけていたのだけど、今回「これはラブストーリーではなくあくまで青春モノで、移ろいやすい思春期の少女の心を描いた作品なんだ」と自分の中で納得しました。タイムリープするごとに、魔女おばさんの発言が「真琴は千昭くんのことが好きなのかと思ってた」「真琴は功介くんのことが好きなのかと思ってた」「真琴は2人のどちらとも付き合わないと思ってた」と変化していくのがそれを表しているような。もしも功介が真琴のことを好きになって告白していたら、きっと真琴は功介のことを好きになっていたんだろうと思う。好きだと言われると意識してしまう、自分のことを好きなはずの相手が別の女の子と親しくする姿を見ると複雑な気持ちになる、それがどういう感情なのかはよく分からない…。男女の、特に思春期の恋愛なんてそんな風に曖昧なもので、でもそれが悪いわけでは決してなくて。自分でもどうしようもない、曖昧でころころと変化する気持ちに何かしらの決断を下して向き合っていくという、真琴という1人の少女の心の成長物語だったんだなあと、何度目かの鑑賞にして初めてそんな風にこの映画を観ました。

また何年かして鑑賞したら、新しい発見があるんだろうな。そういうところを取っても、この作品はとても魅力的だなあと改めて思います。

上映の後はスタジオ地図のプロデューサーと角川パッケージプロデューサーのお二方のトークショーもあり。とても楽しい時間でした。特に、この作品の上映館が21館しかなかった(興行収入も2.6億)というのには驚き。今では誰もが知る作品なのに!
DVD化の際に初回特典で封入されたフィルムは、スタッフ全員で徹夜して手作業でカットしたそうです。もちろん大変なことだけど、それだけこの作品に対する皆さんの愛が深かったということで、ああそういう仕事っていいなあ、と羨ましくなりました。
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