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もう頬づえはつかないのLODGEのレビュー・感想・評価

もう頬づえはつかない(1979年製作の映画)
5.0
ATG作品。
恋愛物はあまり観ないがこれはATGだしと言う事で鑑賞。

「桃井かおり」がこの頃から既に「桃井かおり」なのが凄い。全く意に返さない。
様々な物に様々なジャンルがありカテゴライズしがちだが彼女は何にも形容し難い。
「桃井かおり」
と言うジャンルだ。


早大文学部に通うまり子(桃井かおり)。何に対しても情熱を持てず、転がり込んできた橋本(奥田瑛二)と好きでも無いのに何となくで同棲している。
ある日、以前付き合っていた売れないルポライターの恒雄(森本レオ)が訪ねて来て昔の気持ちを思い出しまた依存してしまう。。。

前述した様に「桃井かおり」がもう既に「桃井かおり」。めちゃくちゃ美人!
黒髪で重めのショートカットがめちゃくちゃ綺麗。美しい。声のトーンも低いし、終始気怠そうだし、デフォルトで顔が気まずそうだし。笑
こんな色気のある大学生いる?笑
と言っても当時28歳くらいみたいですが。
やはり昭和の女優さんは美人な方が多い。
こんな女性はイヤだなあ〜と思いつつも惚れさせる、とても魅力的な女性。

ファッション的にも洒落てて無地白Tとデニムであんなにカッコ良いのか。。。
コートのスタイルも良かったし、赤い傘を差してるのも洒落ていた。

当時の"シラケ世代"の恋愛を描いているみたい。"シラケ世代"とは真面目な行いがダサい、何においても熱くなりきれず興が冷めた傍観者の様に振る舞う世代の事でその時代感と桃井かおりのぶっきらぼうで常にテンション低くて、声が小さい立ち居振る舞いが見事にマッチしている。メンヘラ気質なのも全く違和感が無い。笑

そして森本レオのクズさ加減!笑
最低で最高な演技だった。
女性がああいう男に惚れるのも分からないでも無いと思う。
危険な男で全く連絡もせず放置、何をしているかも分からなく何を考えているのかも分からない。しかし、突然連絡を寄越したりして振り回す。しかも歳上。

当時の時代感もあるのかもしれないが、ああいう自分勝手な男が男らしいと思われてたのかな、、、?いや、今もそう言う男が好きな女性もいるか。。。

しかし、妊娠が発覚した時は「俺は父親にはなれない」だの「俺の遺伝子を残したくない」だの「頼むから堕ろしてくれ。お願いだ」だの自分勝手な事を言っていて腹が立った。ぶん殴りたい。カッコイイのにクズ。笑

その時の瞬きをせず桃井かおりが水をこぼすシーンがとてつもなく切なかった。水を掛けたかったけど出来なかったのか、堕胎のイメージなのか、どちらにせよ惚れた男の前で泣けなかった涙。

ああ言う強い女性って弱みを見せれないのかな?でも本当は強く無くて弱みを見せれない。いや見せたく無いのかな、、、
そう思うと胸が苦しくなる。

ストーリー的には起伏があまりないのだがまたそれも日常的でリアル。桃井かおりでもう成立していて終始目が離せない。
ラストの全て吹っ切れた感じが空の晴天と相まってとても清々しくてスッキリした。
頼むから幸せになってくれと切に願う。笑

そして何より、まだデジタルが発達してない時代でドアに手紙を挟むシステムが良いですね。言葉に熱が感じられます。
現代だと電子上の文章やスタンプだけでやり取りしたりで熱量が感じにくい。
それも便利ですがやはり"文章を書く"とか"小さい手帳とペンを持っておく"とか。
これが素敵ですね。自分も携帯しよう。

ラストの天井桟敷チームが作ったエンディングも沁みた〜
やっぱりATG作品好きだな〜
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