えそじま

ハズバンズのえそじまのレビュー・感想・評価

ハズバンズ(1970年製作の映画)
4.7
この三人の登場人物はたぶんまじめに読書をしたことがないんだろう。だから孤独と向き合う術を知らぬまま中年を迎えてしまった。それまでは金も地位もあり、家庭生活もそれなりに豊かだった。人生は男性的な自惚れで保護されていた。ところがその虚飾は、ある日共通の親しい友人の死との直面によってとつぜん底抜けてしまったのである。時すでに遅し。

家庭や社会生活の感情的なもつれは老いはじめた身体に重くのしかかってくるはずだ。しかしその重みに耐えきれるほど精神は成熟していない。だから、逆に幼児性を解放することで、少年時代のような人生への情熱を取り戻してみせようと粗野な冒険にでる。四十にもなってそんなことが可能であると思ってしまうくらいに彼らは愚かだった。いい大人が、行きずりの他人や、仲間内ですら傷つけあうあのバカ笑いほど悲しいものはない。それこそ「男らしさ」の罠にみずから取り囲われているようなものだからだ。
えそじま

えそじま