クロスケ

ハズバンズのクロスケのレビュー・感想・評価

ハズバンズ(1970年製作の映画)
4.4
カサヴェテスの映画をスクリーンで観る悦び。

中年男3人が年甲斐もなくはしゃぎ、酒を飲んでは同席者に絡んで、ベロベロになってトイレで吐く。思いつきでロンドンに行くと、見境なく女性をナンパし、乱痴気騒ぎに興じて我を忘れる。

そんな光景がひたすら繰り返されるだけなのに、どうしてこんなにも画面に釘付けになってしまうのでしょうか。
『フェイシズ』や『こわれゆく女』がそうであったように、ここでも気不味いシチュエーションが延々と映し出されるのですが、画面の中でけたたましく動き回る登場人物たちに向かって、引きつった笑みを口元に浮かべながら「さぁ、遠慮なく思いきりやってくれ」と心の内で盛大に煽っている自分に気づかされます。

画面いっぱいに登場人物たちの様々な「顔」が目まぐるしく入り乱れる。天地がどちらなのかすら混乱してしまうほどの奔放なカメラの動き。
カサヴェテスこそ映画館で観るに相応しいと、生々しい身体感覚として実感しました。

カサヴェテスの公私に渡るパートナーである、ジーナ・ローランズはとうとう顔を見せることはありませんでした。実際の夫婦である二人の夫婦役としての共演は、オープニングのホームフィルムの中だけでしか見ることが出来ないというのも心憎いですね。
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