カタパルトスープレックス

ハズバンズのカタパルトスープレックスのレビュー・感想・評価

ハズバンズ(1970年製作の映画)
3.8
ジョン・カサヴェテス監督のメジャー配給作品。自主制作じゃないけどとってもカサヴェテスらしい作品です。コメディー作品に分類されていますが、違います。男のミッドライフ・クライシス(中年の危機)を描いた風刺ドラマです。

本作のテーマは「男らしさ」でしょうね、悪い意味で。しょーもない存在なんですよ、男って。

それぞれ家庭を持つ男四人組。その一人が亡くなってしまった。残された三人(ベン・ギャザラ/ピーター・フォーク/ジョン・カサヴェテス)は葬儀の後に家に帰らず飲み明かし、夜が明けても帰る気配すらみせない……という話です。この三人に巻き込まれた人たちは大変!!!

ジョン・カサヴェテス監督の特徴は「不安定な感情」です。その不安定さを生み出すために感情がぶつかるシークエンスはしつこいくらいに長い。本作では『フェイシズ』に引き続きシネマ・ヴェリテが演出として使われているんじゃないかと思います。男三人の醜態が不快なんですよ。あえて演出としてそれを引き出している。

シネマ・ヴェリテは手持ちカメラを使ったドキュメンタリーに近い手法です。シナリオと台本はあるのですが、解釈は役者に委ねられています(即興演技ではないです)。あまりにも長い時間を役者に委ねられるので、いろんな感情が現れてくるのです。それが「不安定な感情」の正体です。この場面はいつまで続くんだろう?と観ている側も不安になってくるんです。

もう一つのカサヴェテス監督の特徴は「極端なクロースアップ」です。この「極端なクロースアップ」が大々的に使われるのが前作『フェイシズ』(1968年)からですが、本作でもよく使われます。しかし、男のクロースアップはむさ苦しい!ジーナ・ローランズとはやっぱ違う。