デニロ

木枯し紋次郎 関わりござんせんのデニロのレビュー・感想・評価

3.0
1972年製作公開。原作笹沢左保。脚色野上龍雄。監督中島貞夫。紋次郎に菅原文太。片時も長楊枝を咥えて離さない。テレビドラマ/中村敦夫もそうだったのか。

テレビドラマ/中村敦夫の紋次郎を知らない。六文銭の小室等が作曲して、上條恒彦が歌う主題歌が流行っていたのは知っている。わたしはその頃何をしていたんだろうか。

飢饉。子沢山の女が生まれたばかりの子を間引きしようとしているところに紋次郎が通りがかる。紋次郎は女に手持ちの金を与え生きよと告げる。涙を流し紋次郎を拝む女。紋次郎も生まれたばかりの頃間引きされるところを、姉が泣きじゃくって止めさせて生きた経緯があるのです。が、女は生きることを止め、子を悉く殺し自分も首を吊る。その足元には紋次郎の与えた金子。底なしの絶望に飲み込まれてしまったのか。女の死を前に紋次郎は思う、姉はどんな思いで自分を育てたのか。記憶がよみがえる。

本作は紋次郎とその姉市原悦子との愛憎です。

宿場で知り合った女郎が自分を生かしてくれた実の姉であることに気づく紋次郎。そんな姉の媚態を見るに忍びず幾許かの金を包み姉の元を去る。市原悦子はその金を置いて行った渡世人のことを根掘り葉掘り聞いて気付く、実の弟だということを。涙涙の再会になるのかと思うとさにあらず、13歳で身売りされた市原悦子はもうかつての姉ではありません。弟紋次郎が名の知れた渡世人と知ると気が大きくなったのか振る舞いがぞんざいになる。

そんな姉を利用して紋次郎を味方に引き寄せようというやくざ、市原悦子も紋次郎を利用して金に換えようと算盤勘定。紋次郎は渡世人としての義理も人情も果たそうと振る舞うしかありません。紋次郎の嘘偽りのない言葉を信じることができず目の前の金を信じてしまう悲しい姉市原悦子。遂にはその金に裏切らてしまい死に至る。

今日は生き延びた紋次郎。しかしこの稼業で名を売っている以上次々に彼に方法が待っているという言葉が襲い掛かる。

さて、中村英子という女優がこの作品でデビューした。藤純子の後継として東映が売り出そうとしている女優だ。本作では市原悦子と同じ店の女郎役で重要な場面を担っている。幾本かの映画に出演したが1974年山口組三代目の長男田岡満に見染められ結婚。一女をもうけるが、結婚10か月後にガス自殺。享年24、何に飲み込まれてしまったのか。

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