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TATTOO「刺青」ありのkuuのレビュー・感想・評価

TATTOO「刺青」あり(1982年製作の映画)
3.8
『TATTOO<刺青>あり』製作年1982年上映時間107分歳

30歳までに何かデカいことをやったる、と思いつづけ、ついには銀行を襲撃するまでに至ったひとりの男の軌跡を描いたドラマ。
監督はピンク映画界の大御所・高橋伴明。

少年院あがりで、20歳のときに“30歳になるまでに何かドデカいことをやったる!”と誓った竹田明夫。
それまでの生活を一変させるため、パーマをかけ、胸に刺青を入れキャバレーのボーイになった。
同じ店のナンバー・ワン・ホステスの三千代を強引にくどき同棲を始める。。。

今作品のモチーフとなったんは、梅川昭美、小生はタイムリーでは知らないが、ガキのころ悪さすれば、事あるごとに兄や姉が『そんなことしてたら梅川にカミソリで耳削がれるで』って脅された。
当時は妖怪や怪物でと思ってたが、ある時、ドキュメンタリーの書籍で彼が何を起こしたのか知って、改めて震え上がったのを覚えてる。
うろ覚えながら、梅川が少年時、少年院行きを命じた広島家庭裁判所は、審判の最後に
『少年の病質的人格は既に根深く形成されていて、容易に矯正しえないものである。少年が今後、社会に出れば同様の多種の非行を繰り返し、再び犠牲者が出る可能性があると思料される。だが少年であるがゆえに処罰しえない』と補足したそうです。
また、三菱立て籠り事件を起こした当時、梅川が住んでいたマンションの映像が残されてて、本棚には独裁者の伝記を買い揃え、壁には猟銃を構える梅川本人の写真が飾られていたそうです。
仕事ぶりはいたって真面目で客からの評判も抜群。
梅川の知人が語った証言によると、母親思いで凶悪な姿からはかけ離れた一面だった。
食事にもこだわりがあり、ルックスを気にして塩分を摂ることを異常に嫌っていて、毎日腕立て伏せを100回がルーティン。
胸には刺青があり、脳科学の中野信子によると、梅川はサイコパスやった可能性があるそうです。
サイコパスてのは良心が異常に欠如、口が達者で平気でウソをつく人格障害で、一見すると社交性が高くてマジメで非の打ち所がない人はサイコパスある可能性がある。
そこに加え、梅川を狂わせたとされる魔性の女の存在があるそうで、その年齢はわずか15歳もさることながら、梅川昭美と鳴海清の関係が書かれてたし驚いた。 
鳴海清は1978年、日本最大の暴力団組長を狙撃、ベラミ事件を起こした凶悪犯。
狙撃は失敗、その後に逃走し六甲山中で腐乱死体となって発見された。
実際、凄惨なリンチを受け殺されたそうで、その映像がビデオテープで闇で出回ってたとかないとか。
この鳴海清もまた、魔性の女と付き合っており、衝撃的な三角関係が明らかになったそうです。
そんなこんなを、描けんのかなぁと思いつつ鑑賞を開始しました。

その今作品ですが、ほぼ、ほぼ三菱銀行猟銃篭城の展開を、ストレートになぞりながら、主人公への愛情ともとれる這うようにカメラはまわり続けてました。
悲惨でイカれ狂った実際の事件の部分は全く取り扱われていないのが良いのか悪いのか。
刺青の彫り師役の、泉谷しげるは置いといて、(ちょい役)
俳優陣はホント巧みで、渡辺美佐子の演技は良かったし、印象的な主人公の母親役をなりきってた。
ドつきドつかれ、ダメダメな女子の何とも云われん湿り気を帯びた艷を漂わせる関根恵子(高橋恵子)の役も良かったし綺麗な女優やと感じたなぁ。
(モチーフになった15歳やと思えば艷すぎるかな)
んで、なんて云っても宇崎竜童はやるなぁ。  
神経質なド・チンピラの遅疑逡巡さをなんともまぁなりきって演じている。 凝ったカットもインパクト強いけど、
けどですわ、モンスターとまで夢にみた梅川のイカれ具合やヴァイオレンスがあまりにも他愛も無く描かれているような気がして、小生が年を経たのか少々残念に思もったかな。
当時の宇崎竜童(心だけ)ではなく、今の酸いも甘いも分かった優しげな中に狂気をもつ宇崎竜童(心)なら、も一つパンチが効いてたんじゃないかな。
いやいや、あの何処と無くキョロッた所こそが、製作陣の狙いなのか聞いてみなきゃ分からないけど、個人的にはパンチはも一つやったかな。
松田優作の演じる竹田明夫を是非ともみたかったのは重ねて無理な話やけど。
でもまぁ相対的には衝撃的な作品には変わりなく、善き邦画と云えるんじゃないかな。
他の出演者を羅列すると、
電気屋の店員:北野誠(映画『ガキ帝国』思い出した)、電気屋の店員:北野誠(映画『ガキ帝国』思い出した)、
水野:ポール牧、大崎:戸井十月、三千代の父:垂水悟郎、三千代の母:青木和子、検死官:荻島真一、書店の親父:原田芳雄、クレー射撃場の客:西川のりお:上方よしお、キャバレーのウェイター:趙方豪
ほんでもって、フェリー発着場の酔っ払い:大杉漣がでてたし個人的には嬉しかった。
バーのホステス:秋元めぐみ、巡査:今泉洋:加藤益弘、刑事:椙山拳一郎、刑事:田村貫:坂田祥一郎、高木:内山森彦、男:野上正義、中年の婦人:西岡慶子
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