だい

血と砂のだいのレビュー・感想・評価

血と砂(1965年製作の映画)
3.7
これまで見た日本の戦争映画の中でいちばん面白かった!


娯楽作と重厚なテーマ作のちょうどいいとこ取りのバランスが天才。

前半の軽い雰囲気と小杉の熱血や人間関係的に、
どう考えても何だかんだ上手く帰ってくるやつにしか見えないんだよなぁ。


精鋭を3人選んでいいと言われたのに、
小杉が選んだのが懲罰兵であり、
そのうち2人が戦闘で何も役に立たなかったという判断ミス。

処刑された見習い士官が嘘の報告をしていなければ、
小杉の暴走はなく、
結果、そもそもこの戦闘が起こっていなかった可能性があること。


そういう主人公のミスだったり何だったりを通して、
戦争の悲惨さや、
小部隊のどうにもならない現実という虚無感が表現されるの上手い。

単純なヒーローものでもなく、
単純な悲哀ものでもないんだよな。


ってか大尉は何だかんだちゃんと真面目に考えてる風に描かれたけど、
「俺は大穴に賭けた」って、
戦争の指揮を一か八かでやっちゃダメよ!



最後の演奏で隊員たちが感涙極まるシーン、
慰安婦によって隊員たちの士気が上がるシーン、
側面から部隊を支えた人たちへの感謝、
これたぶん岡本喜八監督が大事にしてるものなんだろな。

何かそういうとこに血が通った映画だと思うわ。

戦争に対して目的を見出せていなかった若者たちが、
お春さんを守るためという目的を見出すって解釈。
殊更慰安婦を問題視するプロ市民たちに問うてやりたい。



戦死者が出ても、度々みんなで楽しく演奏する青年兵たち。

往年の名作ファミコンソフト「迷宮組曲」では、
ステージが進む毎に楽器が増えていって演奏が厚くなっていくけど、
逆に、
一人一人戦死していってオケが薄くなっていくことで、
たとえ楽しく演奏してても悲しさを表現するのって、
これって悲しさの表現としては最上級だと思うんだよな。

音楽が好きな人にだけめっちゃ伝わるやつ。



「和製ウィドマーク」佐藤允が今回もいい味出してる。
もっともっと評価されるべき俳優だと思うんだよなあ。
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