みかんぼうや

血と砂のみかんぼうやのレビュー・感想・評価

血と砂(1965年製作の映画)
3.9
岡本喜八監督のストレートな反戦映画。同じく反戦映画ながら全く戦闘シーンを見せなかった「肉弾」とは対照的に、未来ある若者たちが壮絶な戦場の現場に送り込まれ、敵に立ち向かっていく姿を直球で描くことで戦争の悲惨さと愚かさを描く。

第二次世界大戦中、武器すら持ったことのない戦場音楽隊の齢二十にも満たない若者が、手練れの曹長(三船敏郎)の指揮のもと、中国に奪われたヤキバ砦の奪還を指示され、戦場のど真ん中に突入する・・・

ストレートな反戦映画と言いつつも、喜八監督らしい独自性溢れるコミカルな演出や台詞回しは健在。ただし、映画全体の基盤となっているのは、あくまでも戦場の最前線。大爆撃と銃撃戦の中、楽器を演奏し続け戦場に鳴り響く「聖者の行進」。その異様な雰囲気の中で迎える圧巻のクライマックスはこれまで観てきた戦争映画の中でも特にインパクトに残る名シーン。

決して惨たらしい映像描写がたくさん出てくるわけではないが、楽器を持った時の楽しそうで生き生きとした姿が、かえって彼らを待ち受ける戦場での殺し合いの愚かさを引き立てる。喜八監の戦争作品には、そのコミカルさの中に、常に若者の明るく素晴らしい未来を奪い去った戦争に対する強烈な怒りを感じる。
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