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血と砂のGTのネタバレレビュー・内容・結末

血と砂(1965年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

 戦争×音楽という異色の組み合わせ。音楽隊の少年たちが見る、地獄の戦争。
 冒頭、戦場で楽器を吹き鳴らしながら兵士たちが陽気に行進するというシュールな映像でスタート。オープニングの「聖者の行進」は(吹奏楽を長年やってきたはずなのに、聞いたことあるだけで曲名を知らなかった)、以降事あるごとに何度も演奏され、この映画のテーマソングといえる。戦争をするうえで楽器は明らかに邪魔であり、大太鼓やチューバを運びながら険しい山を運んだりすることに対して違和感を唱えるものがいないのはある種の不条理を感じる。
 エキセントリックな演出とストーリーが特徴の岡本喜八監督だが、楽器を持って戦場を駆け回ること以外はちゃんと戦争映画している。しかも篦棒に面白い。人情のある分隊の指揮官小杉総長、乱暴者だが根は優しい犬山など、魅力的なキャラクターが目白押しで、そんな彼らが織りなすドラマもまたとても魅力的だ。そしてそれを盛り上げる、軽妙だがどこか哀愁のあるジャズ。音楽好きには堪らない映画といえる。
 テンポよく進み全体としては明るい雰囲気だが、実際にはかなり悲惨で救いがない。陣地を奪取したものの敵の猛攻に押され、結局分隊のほぼ全てが戦死してしまう。迫撃砲が次々に着弾する中只管「聖者の行進」を演奏するシーンが凄まじい。最後の最後で戦争は終了するも、持田に勘違いされた捕虜は銃で死亡し、その持田も迫撃砲で死んでしまうという後味の悪い結末。「なんで人が人を殺すんだろうねえ」。戦争を描き続けた岡本喜八監督の、心の叫びでこの映画は幕を閉じる。
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