喜連川風連

血と砂の喜連川風連のレビュー・感想・評価

血と砂(1965年製作の映画)
4.8
太平洋戦争版スイングガールズ
もとい日本戦争映画傑作のうちの1つ

最初のシーン、戦場のど真ん中で
楽器を鳴らしながら「聖者の行進」を吹き、ステップを踏む軍楽隊に思わず笑ってしまった。

軍楽隊のリズムに見ているだけで楽しくなる。

この少年軍楽隊が歩兵部隊として、最前線に投入される様を描く。

こう書くと物騒だが、物語の雰囲気は明るい。だが、人は死んでいく。
このアンビバレントなバランスが妙に生々しくもあり、とても心惹かれる。

戦後数十年はむしろ戦争映画に求められたのは、反戦や悲しみというよりは娯楽的側面が強かったのかもしれない。

「戦争の悲惨さ」というのが、あまりに一般大衆にとっては当たり前で強くメッセージとして押し出す必要がなかったのかもしれない。
(全くないわけではないが)

例えば同時期に上映された
『ゴジラ』も破壊される街が東京大空襲のスペクタクル性を想像させただろうし、天皇をコミカルに演じる映画があったりもした。

各人物も魅力的だった。
人でなしのように見えて実は潔癖な司令官、天然ボケの墓屋、江戸っ子で気が短い料理屋、みずみずしい楽団少年兵、そして三船敏郎演じる軍曹殿。
キャラクターとしてどれも最高!
兵士たちを楽器で呼ぶのも好き!

オーケストラで使うような大きな楽器を最前線に持っていくことはないだろうし、ところどころ突っ込んでいけば、キリがないんだろうけど、映画として凄く凄く面白かった。

兵士が撃たれるたびに、低音が響き渡る演出や、ラストシーンで、亡くなっていく各パートの音がBGMから消えていく演出に鳥肌。

そして、ラストシーンのやるせなさ。

さすが娯楽映画の天才岡本喜八。
何度も言うが、本当に面白い。
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