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アミスタッドのYYamadaのレビュー・感想・評価

アミスタッド(1997年製作の映画)
4.0
【アメリカ大統領を観る】
★第6代大統領:
 ジョン・クインジー・アダムズ
 (1767/7/11 - 1848/2/23)
◆在任期間: 1825/3/4 – 1829/3/4
◆選出政党: 民主共和党
 (マサチューセッツ州)
◆トピックス:
・第2代大統領ジョン・アダムズの息子にて、最初の親子二代の大統領(2番目は第ブッシュ親子)
・第二期大統領選に落選後に外院議員を務めた唯一の大統領

★第8代大統領:
 マーティン・ヴァン・ビューレン
 (1782/12/5 - 1862/7/24)
◆在任期間: 1837/3/4 – 1841/3/4
◆選出政党: 民主党(ニューヨーク州)
◆トピックス:
・最初の非アングロ・サクソン系かつ、第一言語が英語ではない(オランダ語)唯一の大統領。

〈見処〉
①アメリカ南北戦争以前の史実を描く、
 歴史映画の傑作
・『アミスタッド』(原題: Amistad)は、1997年製作のアメリカ映画。
・1839年6月、ポルトガル船にて拉致・連行された53人の黒人奴隷達は、スペイン人に買われてラ・アミスタッド号でキューバへ向かう途中、奴隷達のリーダー、シンケ(ジャイモン・フンスー)を中心に反乱を起こし、乗組員を殺害、船を乗っ取る。
・しかし、6週間後にシンケ達はアメリカの沿岸警備船に拿捕され、アメリカのコネチカット州で投獄され、彼らは海賊行為及び殺人の容疑で裁判にかけられる。
・しかしながら、死刑確実だと思われた裁判は意外な方向へ。スペインの女王イザベルはアミスタッド号の積荷としてシンケ達の所有権を主張、舵取り役の2人は自分たちが買った奴隷として所有権を主張、アメリカの沿岸警備船の乗組員もシンケ達の所有権を主張、いつの間にか裁判の目的がシンケ達の所有権争いが争点となる。
・そんな中、大富豪で奴隷制度廃止論者のタパン(ステラン・スカルスガルド)、元奴隷の黒人ジョッドソン(モーガン・フリーマン)は、若き弁護士ボールドウィン(マシュー・マコノヒー)を雇い、奴隷達の弁護を請け負う。
・ボールドウィンは、シンケと話を交わしてゆくうちに、彼らの生い立ちと何が起ったのかを知り、一時は裁判を有利に進めていくが、この裁判は奴隷解放制度の是非をめぐりアメリカ南北にて内戦も引き起こしかねない政治問題にまで発展していた。
・再選を狙う現職大統領、マーティン・ヴァン・ビューレンによる様々な妨害手段に対抗するため、ボールドウィンは、元大統領のジョン・クィンシー・アダムズ(アンソニー・ホプキンス)に手助けを求める…
・本作は、興行成績は苦戦をしたが、第70回アカデミー賞で助演男優賞(ホプキンス)、撮影賞、作曲賞、衣装デザイン賞にノミネートされ、批評面では高く評価された歴史ドラマである。

②いまだ納まらない、差別の歴史
・本作中盤に描かれるシンケら黒人奴隷達が家畜以下の扱われ方をされるシーンは、非常に観るに堪えられないほどもの。これらの非人道的な奴隷制度の是非が国家を二分するほどの争点になったことが、現代の日本人にとって、にわかに信じがたい事実に感じる。
・本作では、アンソニー・ホプキンス扮するクィンシー・アダムズが、その父であり、「アメリカ建国の父」でもある、ジョン・アダムズらの建国の精神を説くラストシーンは感動的であり、黒人奴隷に対する自由への第一歩が示されている。
・しかしながら、本作で描かれる事件を契機の一つとして、アメリカは南北戦争に突入、苦難の歴史は、以降の2世紀を跨がり、現在進行形で続いている。
・本作は、同じスピルバーグ監督による『リンカーン』(2012)にて描かれる、1865年の奴隷の永久解放を目指した合衆国憲法修正第13条の議会可決と、南北戦争終結の物語の前日譚の側面が強い。ぜひ、本作と連続して『リンカーン』を鑑賞されたい。

③「ドリームワークス」快進撃の始まり
・本作は、1994年にディズニーの製作部門トップだったジェフリー・カッツェンバーグの退社に伴い、スピルバーグ、レコード会社経営者のデヴィッド・ゲフィンを誘って設立した映画製作会社「ドリームワークスSKG」における、スピルバーグ監督第一作にあたる。
・以降、スピルバーグのほぼ全ての監督作品、および『トランスフォーマー』などのはヒット作を製作。
・「ドリームワークス」設立後のスピルバーグは、製作ピッチを早め「早撮りスピルバーグ」が復活した。

④結び…本作の見処は?
○: 黒人奴隷を物資として扱う、非人道的な行為は、決して忘れてはいけない過去の事実。スピルバーグの社会派ドラマの中で、最も胸に迫る作品だ と思う。
○: 冒頭の黒人奴隷の反乱シーンは、非常に衝撃的。スピルバーグの残酷性が垣間見える。
○: アンソニー・ホプキンスの圧巻の演技。アメリカ人として、ラストシーンの陳述を聞いてみたかった。
▲:史実ドラマに対する スピルバーグによる意図的演出だろうが、ジョンウィリアムズによる素晴らしい劇中曲をより多く取り入れたほうが、よりドラマティックになったのだろう。
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