19世紀前半に黒人奴隷船で起きた反乱事件をめぐる裁判の行方を描いた歴史ヒューマンドラマ。
「カラーパープル」から始まったスピルバーグの評論家への挑戦は「シンドラーのリスト」でのオスカー獲得で結実しましたが、同年の「ジュラシック・パーク」で興行的な大成功も同時に収めたことが両作の評価をさらに高めていました。
今作と同年に「ロスト・ワールド」を公開したのは、今作が人種差別問題をテーマに史実から物語を生み出すという点で、「シンドラーのリスト」の姉妹作的な位置付けであることを示しているように思えます。
しかしシリアスなテーマを扱う割には、善人は善人、悪人は悪人というファンタジーの領域を出ない人物描写と、いかにもな場面で流れる大げさな音楽が今作に表層的な感動のドラマという雰囲気を持たせてしまっている気がしました。
ストーリーは過剰にドラマチックになることを避けたために平坦な印象で、どうせ大げさな演出をしてしまうならストーリーもいっそ劇的にしてくれた方が退屈しなかったと思います。
