ねこねここねこ

アミスタッドのねこねここねこのネタバレレビュー・内容・結末

アミスタッド(1997年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

とりあえずモーガンフリーマンやアンソニーホプキンスが出るということで録画して観た作品。1839年のアミスタット号の事件とその後の裁判を元にした映画。

マシューマコノヒーはまたも弁護士役だが「評決のとき」(これは当時ロンドンに行く時の飛行機で観た)と違い、最初はそこまで人権問題として大きく捉えている感じではなく、仕事欲しい!くらいの軽さがあったが、途中からはこの黒人達を解放するんだという使命感に溢れるようになって行くのが良かった。

ある日突然網で捉えられ、いきなり奴隷という商品として船に乗せられるアフリカ人。黒人というだけで虐げられ、何も悪くないのに鞭打たれ、与えられる食事は粗末でわずか、それでも食糧が足りないと間引かれる。その間引き方も重りと鎖で繋がれ海に生きたまま突き落とされる。
こんな仕打ちを受けていたら、拘束している鎖から抜け出せたら殺したくもなるだろう。

アフリカに戻るはずが航海士はわざとアメリカに。そして裁判に。
良心に従って正しい判決を下した裁判長は立派だったと思うが、喜んだのも束の間、再選やスペインとの関係ばかり気にする大統領によって最高裁に委ねられる。

喜びの最中にこんなことを伝えないといけない弁護士の気持ちも、伝えられたシンケの気持ちもわかる。

この映画で1番驚いたのはアンソニーホプキンス。歩くのはもちろん、ずっと喋るのさえ息を切らすような老人を当時60歳くらいのまだまだ若い時に見事に演じきっているのには脱帽。長台詞もお見事。

聴くものの良心に深く訴える言葉。
シンケとのやり取りも率直で誠実。
どのような言葉で説得したのか尋ねるシンケに「your's」君の言葉さという台詞もジーンと来る。

この大統領はインディアンの問題でも土地を奪うのではなく相応の価格で購入しようとするなど、当時としてはリベラルな大統領であったと思われるが、こうした考え方が南部の人たちから受け入れられず再選しなかった。奴隷制を当たり前としていたスペインやアメリカ南部の人間から攻撃されるであろうことがわかっていても、人権や自由を尊重する発言は勇気がいっただろうと容易に推測できる。
現にその後20年もスペイン女王からクレームをつけられ、補償を求められたが、結局それに応じることなく済んだのは、アメリカの良心の部分かもしれないし、そんな補償を執拗に求めた女王イサベル2世は映画にされて恥を晒すことになる。歴史は100年後にやっと正しく見えるのかもしれない。
 
見るのが辛い場面もあるが、歴史を考えると必要な場面だと思うし、アンソニーホプキンス、モーガンフリーマン、マシューマコノヒーととにかく俳優陣が素晴らしい。
たまたま観て良かったと思えた。