三隅炎雄

真紅な海が呼んでるぜの三隅炎雄のレビュー・感想・評価

真紅な海が呼んでるぜ(1965年製作の映画)
3.8
松尾昭典監督の異色日活アクション。主役の渡哲也と二谷英明の船乗り兄弟のパートは日活定形まんまでドラマとしては無に等しく(終わりの麻薬の雑な扱いを考えると限りなくパロディに近い)、復讐のために日本へ帰ってきた脇役の踊り子中原早苗のパートのみ濃密なドラマが用意されている。映画一番のアクションの見せ場は渡でも二谷でもなく、走って走って走り抜く中原早苗の姿で、最後には彼女が完全に映画を乗っ取ってしまう。ラストの処理も規格外の女性像を放り込むことで日活アクションのホモソーシャルな世界を批評的に意地悪く突き放していると言ってよく、そう言えば松尾昭典には、宍戸錠主演の形を取りながら実質は南田洋子主演だった『ノサップの銃』という批評的なアクション映画の傑作があったのだった。
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