かじドゥンドゥン

炎と女のかじドゥンドゥンのレビュー・感想・評価

炎と女(1967年製作の映画)
4.6
病院での検査の結果、自分が子を作れない体であると知ったイブキは、決して乗り気ではない妻リツコに人工授精を強要し、息子タカシを得た。こうして一見幸せそうな家庭ができあがりはしたが、夫婦の関係はどこかギクシャクし、やがてそのひずみが爆発する。

女の主体的な欲望や情念をまったく無視し、〈女は子どもをもちたいに決まっている〉という都合のいい前提で、自分に産む器械としての役割を押し付け、見知らぬ男の精子を注入した夫イブキへの反発。そして、「父」として、子の所有権を主張し出す男たちへの軽蔑と抗い。母であることの自明性と父が誰かの不確実性とのギャップが生む諍いを、法的な係争としてではなく、女性の分断された心・身の問題として描いた作品。