佐藤克巳

恋も忘れての佐藤克巳のレビュー・感想・評価

恋も忘れて(1937年製作の映画)
5.0
島津保次郎監督のハイセンスなBGで活かしたレディを演じた「兄とその妹」と対象的な清水宏監督の、煙草を燻らせ頽廃美の極致を魅せる桑野通子を観るためにある映画と言って良く、港横浜の風情溢れた彼佐野周二と彼女桑野と子供爆弾小僧の粋な別れの物語の傑作。岡村文子の観光客相手のダンスホールに雇われる女給桑野は、小学一年生の爆弾小僧の成長を楽しみに夜の女に身を落とすが、世間に恥ずかしくない生活を夢見る。佐野は、足抜けする女給を監視する用心棒の一人だが桑野にアパートに誘われ惹かれていく。一方で爆弾小僧は、子供の世界で孤立を深めて行き不登校となり、突貫小僧等のアジトから追い出され雨に打たれて肺炎となる。佐野に母への侮辱行為にはぶちのめせとの言葉通り突貫小僧を懲らしめたが息絶える。佐野は、絶望の淵に立つ桑野に足を洗う支度金を渡し、三年は逢えないと去った。
佐藤克巳

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