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恋も忘れてのshuuheyのレビュー・感想・評価

恋も忘れて(1937年製作の映画)
3.8
いじめっ子と同僚の女たちのカットを横移動ショットで繋いだシーンには思わずドキッとした。いじめっ子に揉まれる息子の環境と、同僚の女たちに揉まれる母の環境は等しい、そんな血の繋がりなんだということ。

二重説明や過度な感情の吐露が目立つ。
清水映画はトラックショットや横移動、前進後退が鮮やかで引き算が効いてて飽きない。その気持ち良さだけで言葉も説明もいらない、極端に言うと物語さえいらない。

胸にくる切ないシーンが幾つもある。
いじめが原因で転校し母と初登校する日、「他の生徒が見てるからお母ちゃんは帰って」と言ったものの後めたさから暫くウジウジしてから歩いていく、あの母と息子の切り返しは絶妙の間だった。息子が除け者にされるときのロングショットや小屋の船の中で一人お弁当を食べる引き画も本当に胸が痛かった。切なすぎて早くカットしてくれと思った。

父性の不在を描く点では是枝映画に似てて入りやすかった。が、物語を動かした父代わりのあの男は家族に介入しすぎて余計に物語を混乱させてしまった。あくまで一瞬助けてくれた〝男〟として描くべきだったように思う。
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