ワンコ

終電車のワンコのレビュー・感想・評価

終電車(1980年製作の映画)
4.7
【オマージュ】

この作品は、ナチス・ドイツの占領下でも舞台演劇の灯を消さなかった演劇界の人々へのオマージュなのだと思う。

実際、ルカやベルナールにはモデルがいて、ベルナールのモデルになったルイ・ジューヴェは、親独派の批評家だったダクシアのモデルになった人物を本当に殴っているらしい。

そして、”竿の別名は何か知ってるか?ゴールなんだよ。じゃあ、竿が二本では何か?ドゥ(2)・ゴールだよ!”というセリフ。

ド・ゴールは、言わずと知れた、シャルル・ド・ゴールのことだが、レジスタンスの指導者で、戦後のフランス第五共和制の最初の大統領、そして、フランス国内のレジスタンスと親独派だった人の融和も図ってフランスの一体化に努め、演劇好きで、ルカのモデルになったルイ・ジューヴェに劇場の立て直しを依頼したことでも知られている。

シリアスなドラマだが、戦争のような不穏な時代でも、そして、占領下の圧迫感がある状況でも、人は演劇や映画のような楽しみを求め、それは希望でもあり、そして、困難にあっても人は恋愛もするのだと言っているのだ。

終電車に乗り遅れさえしなければ、人々は楽しみを求めるのだ。
そして、乗り遅れそうになったら一生懸命走れば良いのだ。

冒頭で演劇界の人々へのオマージュと書いたが、本当は、こうした世界を支える演劇ファンである観客の人々へのオマージュでもある。

トリュフォーは、作品を通じて、様々な思いを表現し、試みを貫いた作家なのだ。
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